研究課題
本研究では「経験に伴い獲得された知識が実行機能の個人内の変容を支える」という可能性を検証することを目的とする。具体的には、「目標に向けて自らの思考と行動をどのように制御するのか」という方略的知識が学習されることに焦点をあて、 初年度では方略的知識の発達差の検証という観点から成人および児童を対象としたオンライン実験を進めた。その結果、 児童でも成人と同様に方略的知識を転移させられることが示された。具体的には、 特定の実行機能課題 (例: AX-CPT課題)を繰り返し実施した直後に、 異なる刺激を用いた同課題に対して方略的知識を転移させられることを確認できた。こうした知見は、実行機能が方略的知識の学習によって一部支えられていることを支持する知見と言える。しかし、その転移の範囲には限界があることも同時に明らかとなった。先行研究では同じ認知制御方略が用いられている想定されている異なる実行機能課題 (例: 手がかり切り替え課題) への転移は見られなかった。このことから、ある課題を繰り返すことで、 複数の課題に共通するような方略的知識を獲得できているわけではなく、単一の課題にのみ通用する方略的知識を獲得していることが示唆された。こうした知見は成人そして児童ともにあてはまるものであった。これらは、実行機能がいかに形成されていくのかを知識や文脈という観点から見直すことに寄与する知見と言える。以上をまとめ、国際学術誌に論文を投稿している。
2: おおむね順調に進展している
本研究プロジェクトは、 ブリストル大学・エクセター大学・京都大学との共同研究であり、 研究を進めるために一月強に1回ほどミーティングを実施してきた。こうした共同研究者との議論を通して、 成人及び児童を対象にオンライン実験を実施することができた。そして、 その成果をまとめ国際学術誌に投稿するまでに至った。こうした進捗は、 当初の計画通りであり、 同様のペースで今後もプロジェクトを進めていきたい。
初年度の成果を国際学術誌に掲載まで至らせるとともに、国際学会でも発表する予定である。また、成人と児童が本当に単一の課題にのみにしか通用しないような方略的知識を獲得しているのかを追求するために、異なる課題「間」で方略的知識の転移が起こる条件を探る実験を実施する。また、本プロジェクトをさらに拡張していくために、更なる研究費の獲得を目指す。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Developmental Science
巻: 25 ページ: e13181
10.1111/desc.13181
Psychological Science
巻: 33 ページ: 1172-1181
10.1177/09567976221074650