研究課題/領域番号 |
22K13824
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
斎藤 元幸 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (70801926)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 思考 / 合理性 / 非合理性 / 因果推論 / 因果モデル / ベイズ推論 |
研究実績の概要 |
認知科学や認知心理学の領域において、人間の思考は因果モデルとベイズ推論を核とするベイズ的アプローチから説明が試みられている。因果モデルとは事象をノードで事象間の因果関係をエッジで表現するグラフのことであり、ベイズ推論とは獲得したデータに基づいて仮説の事前確率をベイズの定理によって事後確率に更新する計算である。先行研究の多くは認知プロセスの解明に焦点を当てており、どのようにすれば非合理的思考が抑制され、合理的思考が促進されるかは明らかにされていない。本研究では、因果モデルの表象を操作することによって合理的思考の促進を試みる。態度・知識・技術の教育ではなく、因果情報の提示やその方法に焦点を当てることが本研究の特色である。命題推論・確率判断・因果推論などの思考課題において、非合理的思考が抑制され、合理的思考が促進される条件を検討し、因果モデルやベイズ推論との関連を明らかにする。 令和4年度は認知科学における合理性概念について歴史的観点と理論的観点から考察した。具体的には、人間の認知は期待効用・論理・確率などの規範に基づいて説明されてきたが、規範からの逸脱が数多く報告されることにより、実際に人間がどのように振舞うかという記述が重視されるようになった。その後、新しい規範が提案され、非合理とみなされてきた反応こそが合理的であると捉え直された。合理性は規範主義と記述主義の間で揺れ動いており、研究の出発点から到達点へと合理性概念の位置づけが変化していることを明らかにした。また、因果推論についての実験的検討に先立ってメタ分析を実施した。データベースから関連する文献を収集し、因果推論に影響する要因について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の実施順序を当初の予定から変更したため、準備に時間が掛かってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は因果推論における因果モデルの役割について実験的検討を行う。因果モデルの提示の有無や提示方法などを操作し、因果効果の推定にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由としては、参加を予定していた学会がオンライン開催となり、旅費が掛からなかった。使用計画については、追加の実験での謝金やオープンアクセス誌への投稿費用などの支出を予定している。
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