研究課題/領域番号 |
22K13831
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 拓朗 富山大学, 学術研究部人文科学系, 講師 (40908670)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ストーキング / ストーカー / うらみ |
研究実績の概要 |
本研究では、先行研究で見いだされてきたうらみの理論モデルの妥当性について検証することを1つ目の目的としている。次に,確認されたうらみの理論モデルをもとに,ストーキング加害者が抱くうらみのどのような側面がどのようにストーキングの実行に影響を与えるのかについて検討し,ストーキング加害のリスク要因を明らかにすることを目指している。 本年度では,うらみの理論モデルの妥当性検証のため,ボトムアップでうらみの心理的体験に含まれる特徴を明らかにする研究を行った。そこでは,20歳から39歳の男女596名を対象としてウェブ調査を実施し,自身が体験したうらみの経験について自由記述で回答を求め,現代の人々が抱くうらみの概念を明らかにすることを試みた。その際,得られた質的データをテキストマイニングを用いて解析し,現代のうらみ概念の一般的特徴を探索的に探った。その結果,先行研究の理論モデルを一部支持する結果が得られたが,それに加え,「悲しみ」感情がうらみの中核的特徴であることが新たに示された。うらみには悲しみに象徴されるような心理的苦悩が伴い,このような苦悩がストーキングの実行に影響を与えている可能性があると考えられる。なお,本研究は感情心理学研究に再録予定である。 今後は,うらみを抱くストーキング加害者に見られる心理的苦悩にも着目し,ストーキングの実行に影響を与える可能性があるリスク要因を明らかにする実証的研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はうらみ体験の心理学的特徴を明らかにする研究を行い,ストーキングに影響を与える加害者のうらみの特徴を明らかにする上で基礎的な知見を得ることができた。当初の計画通り,続いてうらみを抱くストーキング加害者のリスク要因を検討する段階に移ることができており,本研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り,ストーキング加害者が抱くうらみのどのような側面が加害行為につながるのかを明らかにし,未然防止につながる心理学的アプローチを考案する際に有用な知見を得ることを目指す。また,前年度の研究で得られたうらみを抱えた加害者の心理的苦悩にも着目し,苦悩に見られるストーキング加害を誘発しうる側面についても新たに検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の調査費用が想定よりも抑えられたことに加え,調査に伴う人件費もかからなかったため。調査,データ解析に伴う機器を導入するため,次年度以降に執行する予定である。
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