本研究では、先行研究で示されたうらみの理論モデルの妥当性について検証し,それをもとにストーキング関連行動の加害者が抱くうらみと加害行為との関係性について検討し,加害のリスク要因を明らかにすることを目指した。 前年度までは,うらみの理論モデルに関して,ボトムアップでその妥当性を検証する研究を行った。そこでは,うらみを抱いた経験がある男女を対象としてウェブ調査を実施し,自身のうらみ経験について自由記述で回答を求め,現代の人々が抱くうらみの概念を明らかにすることを試みた。その際,得られた質的データをテキストマイニングを用いて解析し,現代のうらみ概念の一般的特徴を探索的に探った。その結果,先行研究の理論モデルを一部支持する結果が得られたが,それに加え,「悲しみ」感情がうらみの中核的特徴であることが新たに示された。うらみには悲しみに象徴されるような心理的苦悩が伴い,このような苦悩がストーキング関連行動の実行に影響を与えている可能性があると推察された。本研究は感情心理学研究(査読付き)に掲載された。 最終年度ではうらみの背景にある心理的苦悩がストーキング関連行動の加害内容と関連していると仮説を立てて調査を行い,テキストマイニングを用いて検討を行った。そこでは,元交際相手から接触を拒まれた経験がある20歳から49際までの男女を対象としてウェブ調査を実施し,その体験当時の心理的苦悩について自由記述で回答を求めた。テキストマイニングによる対応分析の結果,暴力を振るった群,接近行為のみの群,いずれも行わなかった群それぞれに関連する特有の心理的苦悩があることが見出された。これを受け,ストーキング加害者に対して効果的な支援法としてマインドフルネスの視点を提案することができ,ストーキング加害者臨床の焦点や方向性を示すことができた。本研究は犯罪心理学研究(査読付き)に掲載が決定している。
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