研究課題/領域番号 |
22K13834
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野田 智美 京都大学, 医学研究科, 研究員 (20866347)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マインドフルネス / 痩せ / 神経性やせ症 / 感情調節 |
研究実績の概要 |
本研究は神経性やせ症の効果的な介入プログラムの開発に向けて、マインドフルネス研究において多く報告されている感情調節機能の向上における"やせ"の影響を検討することを目的としいている。 2022年度は、神経性やせ症患者を対象にマインドフルネスを用いた介入プログラムを4週間実施した実験の成果が国際誌BJPsychOPENに掲載された。この研究では、マインドフルネス瞑想によって神経性やせ症患者の不安が低減すること、また不安に関わる脳領域の活動が変化することを明らかにした。神経性やせ症は、健康を損なうほどの”やせ”がみられるにもかかわらず、体重増加を過剰に恐れ、拒食や過食嘔吐などの食行動異常がみられる精神疾患である。本研究では、神経性やせ症患者の中心的特徴である「体重増加に対する不安」に焦点をあててプログラムを実施した。そして、治療プログラムの前後で、本人が「体重増加に対する不安」を受容しようとしている時の脳活動を機能的MRIを用いて計測した。結果からは、神経性やせ症患者が「体重増加に対する不安」を受容しようとする際には、扁桃体、前部帯状回、楔前部、後部帯状回など不安に関わる脳領域が活動するが、これらの脳領域の活動が4週間のマインドフルネスプログラムの実施後に低下していることが示されました。これは、神経性やせ症患者の不安に対し、マインドフルネス瞑想が脳活動を変化させることで効果を発揮する可能性を示唆している。 一方で、本研究では、身体内部の感覚知覚に関わる脳領域である島の活動に変化が認められなかった。健常者を対象とした先行研究では、島はマインドフルネス介入によって活動性が変わる領域として報告されていることから、この結果は神経性やせ症患者の特徴である"やせ"の影響を受けている可能性が考えられる。この結果の不一致については、引き続き検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、神経性やせ症患者を対象としたマインドフルネスの介入効果に関する脳画像研究を国際誌で発表した。また、本成果についてはプレスリリースを行い、国民に向けて情報発信を行なった。2023度は、”やせ”のある健常者を対象にマインドフルネスの介入実験を行う予定であるが、リクルート用ホームページの内容の充実や、リクルートの場の確保などの下準備を行ってきた。また、マインドフルネスを用いた介入プログラムの質の向上を目的として、米国Brown大学提供のマインドフルネスの講師トレーニング (1. Insight Inside Us Retreat, 2. MBSR Curriculum Study Group and Skill Building, 3. Ethos of Mindfulness)を受講、修了した。国際学術誌での発表、プレスリリースによるアウトリーチ、来年度からの実験開始に向けた準備等、順調に行えていることから、おおむね予定通りの進捗であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、既に実施済みの神経性やせ症患者を対象としたマインドフルネス介入研究において、マインドフルネスの神経性やせ症患者の内受容感覚への影響について解析を進め、国際誌での論文掲載を目指す。 また、"やせ"の健常者を対象としたマインドフルネス介入の実験を6月ごろよりスタートさせ、順次fMRIデータを収集していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の開始時期を遅らせたことにより、MRI利用料、謝金などの支出がなかったため繰越が発生した。 2023年度より、順次同使徒で支出する予定である。
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