研究課題
本研究は、体重とマインドフルネスの関連を脳機能の観点から明らかにし、神経性やせ症の効果的な介入プログラムを開発すること目的としている。本研究の代表者は機能的磁気共鳴画像(functional magnetic resonance imaging: fMRI)研究を行い、神経性やせ症患者は注意課題遂行中に楔部、楔前部、舌状回といった自意識に関わる領域の活動が健常者と比べて高いこと、また、マインドフルネスを用いた介入によって、不安を誘発した後の感情調節において、自意識に関わる領域の活動が低下し、特性不安も低下することを示してきた。これらの結果はマインドフルネスを用いた介入が神経性やせ症の治療法として有効であることを示唆している。しかし、神経性やせ症を対象としたマインドフルネスの介入研究は報告が非常に限られており、症状改善の中核的なターゲットとなる感情調節や内受容感覚、注意機能等の改善にマインドフルネスがどのような変化をもたらすかは不明である。さらに、極端な低体重を維持する神経性やせ症において、"やせ"という身体的特徴が健常者において多く報告されているマインドフルネスの適応的な働きにどのように影響を与えているかについては検討がなされていない。本研究では、多くの研究で用いられているマインドフルネスストレス低減法(Mindfulness based Stress Reduction: MBSR)と呼ばれる確立されたプログラムの参加者を対象に、身長、体重、体組成などの身体検査、fMRI検査をプログラム前後で実施する。これまで、MBSRの実施に向けて米国ブラウン大学のMBSR講師トレーニングに参加し講師認定を受けた(Qualified)。また、プログラムの質の担保のためにパイロットプログラムを実施した。
3: やや遅れている
介入プログラムであるMBSRの講師トレーニング(Teachers Advancement Intensive, Insight Inside Us, Study group and Skill building, Ethos of Mindfulness, Dialogue and Inquiry, Individual Mentoring)を米国ブラウン大学にて受け、パイロットプログラムを実施するなど、介入の準備を整えた。また、京都大学医の倫理委員会に申請を行い承認を得た。その他、神経性やせ症への介入プログラム開発に向けて、本疾患の脳病態生理を検討する目的で他施設と連携し研究を行い、神経性やせ症患者は、健常者と比べて小脳、中帯状回、後部帯状回、補足運動皮質、中心前回、視床における灰白質体積が減少していること、摂食障害の重症度と眼窩前頭皮質、腹側中前頭皮質、前部帯状回、後部島の体積が相関することを国際誌に報告した。また、安静時脳機能において、神経性やせ症患者は背外側前頭前野を含むネットワークの機能的結合性が強く、後紡錘状皮質と外側視覚ネットワークなどいくつかのネットワークにおいて機能的結合性が弱いという結果も得られ、国際誌にて報告した。このように、いくつかの成果はあるものの、介入プログラム実施の準備に時間をかけたため実験の開始が予定よりも遅れている。
研究参加者のリクルートを開始し、実験を本格的に始動する。本年度はデータの収集に努め、積極的に学会発表を行う。また、先行して実施済みの研究データを用いて、神経性やせ症の身体知覚におけるマインドフルネスの影響について解析を進め、本年度中の論文化を目指す。
実験の開始が遅れたためにMRI利用料、謝礼金などの支出がなく繰越が生じた。2024年度に同使徒で支出予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Molecular Psychiatry
巻: なし ページ: 1-11
10.1038/s41380-023-02378-4