研究課題/領域番号 |
22K13867
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉原 将大 東北大学, 国際文化研究科, 特任研究員(日本学術振興会特別研究員PD) (70822956)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 視覚的単語認知 / 回転 / 鏡文字 / 漢字熟語 / マスク下プライミング |
研究実績の概要 |
2023年度も2022年度に引き続き,漢字熟語を倒立(あるいは回転)した状態で提示することが,単語を「読む」というプロセスにどのような影響を与えるか検討した。具体的には,漢字四字熟語を刺激に用いて,実験参加者に提示刺激が実在する語であるか否か判断させる課題(語彙判断課題)を実施した。その際,ターゲットを視覚提示する直前に,プライム刺激を正立あるいは倒立させた状態で瞬間提示した。実験の結果,プライムとターゲットが同じ語である場合 (e.g., 修学旅行―修学旅行),両者が異なる場合に比べて (e.g., 安全装置―修学旅行),有意に反応時間が短くなるというマスク下反復プライミング効果が観察された。しかし,このプライミング効果は,プライムの各文字をその場で倒立させたときにのみ観察され,各文字の位置が変化した場合(四字熟語全体を回転させた場合)には観察されなかった。これらの結果は,文字の向きと位置に関する処理プロセスが互いに独立ではないことを示しているとともに,向きや位置といった空間的変化に対する頑健性の限界を示唆するものである。 また,同じく語彙判断課題において,漢字二字熟語のプライムを鏡文字で瞬間提示する実験も実施した。実験の結果,鏡文字のプライムに対しても有意なマスク下反復プライミング効果が観察された。このことは,漢字二字熟語の単語認知プロセスにおいては,鏡文字(すなわち,左右反転した文字)であっても瞬時に認識が成立することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は上記のとおり,倒立した漢字四字熟語や鏡文字で書かれた漢字二字熟語を用いた実験を行い,それらの成果を国内学会(日本心理学会,認知神経心理学研究会)で発表した。また,2022年度に実施した実験(倒立した漢字二字熟語を用いた実験)のデータをまとめた論文が国際誌に掲載された。以上のことから,研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,2023年度に実施した実験の結果をまとめて論文を執筆し,国際誌で発表することを目指す。それと並行して,新たに事象関連電位 (ERP) を測定する実験のデータ収集を実施する。データ収集が完了し次第,得られた成果を国内外の学会で発表する予定である。なお,現時点では研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題等はないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度仕様額が生じた主な理由は,人件費・謝金の支出額が想定を下回ったことにある。これは,当初の計画にはなかった新たな実験(事象関連電位の測定実験)の準備に時間がかかり,今年度中に実施できた実験が少なかったことに起因する。本報告書の作成時点(2023年4月)で当該の実験準備が完了しているため,次年度使用額は主に人件費・謝金として使用する予定である。
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