研究課題/領域番号 |
22K13869
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 弘美 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60906733)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 食べ物 / 視覚情報処理 / 心理物理学 / テクスチャ情報 / 画像特徴解析 |
研究実績の概要 |
人間にとって「食べ物」は生存に不可欠であり生態学的に重要な意味を持つ.それゆえ,対人コミュニケーションにとって重要な「顔」が特別な情報処理過程に支えられているのと同様に,食べ物の認知もまた何らかの特別な脳情報処理過程に支えられている可能性がある.本研究の目的は,人間の脳がどのようにして食べ物とそれ以外の物体を判別し,多彩な食べ物のカテゴリや様相,そしてその価値を認識しているのかを,食べ物画像が含む「テクスチャ情報」に着目し,画像特徴解析,心理物理学実験,および脳波解析を駆使して,食べ物の認知と選好を支える脳情報処理機構の一端を解明することであった. 当該年度は本研究の開始年度であり,提示画像が食べ物か非食べ物かの判別,食べ物の属性の分類,視覚的/非視覚的様相の判断,食べ物についての情動的価値判断についての心理物理学実験の準備を完了し,一部の実験を開始した.具体的には日本食およびタイの日常食のテクスチャ画像を1000枚以上取得し,各実験を行うためのプログラムを作成した.遠隔地における実験を可能とするため,オンライン実験のためのプラットフォームの作成を開始した.実験刺激の収集及びデータの取得については,タイのラジャマンガラ工科大学タンヤブリ校と提携して行った. また,本研究の成果の一部であるテクスチャ統計量の知覚や人間の色知覚のメカニズムについて,国際会議や国内学会の招待講演において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,人間がテクスチャ画像から食べ物を認識するためにどのような画像情報を用いており,その情報からどのように食べ物の様相についての判断,認識を行っているかを心理物理実験と脳波解析等により明らかにすることを目的としていた.そのため,(1) 食べ物の検出,(2) 食べ物のカテゴリ判断に関わるメカニズム,(3) 食べ物の視覚的・非視覚的様相の判断に関わるメカニズム,(4) 情動的価値の判断に関わるメカニズムの解明を目指し,1年目となる該当年度はそれぞれに共通する実験準備と一部の実験の開始を計画していた.実際には該当年度には実験に使用する日本とタイの日常食のテクスチャ画像を1000枚以上収集し,Go/No-go課題を用いて食べ物・非食べ物の弁別反応時間を分析する実験,および,食べ物の様相や情動的価値の評価実験を開始した.当初,実験刺激や被験者は日本食・日本人を対象とする予定であったが,ラジャマンガラ工科大学タンヤブリ校と共同研究を行う機会を得,タイにおける実験刺激や被験者の獲得が適った.また,感染症対策及び遠隔地における実験を可能とするため,オンライン実験を行う基盤を整えつつある.
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今後の研究の推進方策 |
今後は該当年度に開始した心理物理実験を完了し,様々な評価軸における人間の評価と画像統計量の相関や評価軸同士,あるいは画像統計量同士の相関行列をベースに,PCA/ICAなどの分析手法を駆使して,食べ物の検出にとって重要な画像情報を決定する.また,多くの食べ物画像に対する脳波から,SVMなどの機械学習やDNNを利用して食べ物カテゴリの分類を試み,その結果に基づき食べ物のカテゴリ認知に対応する皮質応答を探る. 得られた知見を,国際専門誌において原著論文として発表する.
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