研究課題
認知症の早期発見のために、近年注目されているのが「こころの理論」の有無を評価する誤信念課題である。誤信念課題の中でも他者の心的な状態を推測する「1次の誤信念課題」と「Aさんはx(物)がy(場所)にあると思っているとBさんは思っている」という入れ子構造を含む「2次の誤信念課題」の成績が、認知症の兆候を早期に検出できるものとして特に期待が高まっている。しかしその一方で、認知症は言語理解に問題を抱える事例も指摘されている。そのため従来の言語的な応答のみで認知症の誤信念課題の成績を評価することは、認知症におけるこころの理論の問題を正確に理解するうえでは不十分である。そこで本研究ではアイトラッカーを利用した非言語的なアプローチで、認知症患者の誤信念課題の理解を調べることで、認知症の症状の徴候を捉えるための指標を見出すことを目的としている。今年度は大学生を対象とした予備実験を実施した。その結果、1次の誤信念課題では、他者の誤信念を正しく予測する視線パターンが得られた一方で、2次の誤信念課題では、エラーパターンを示す参加者が一定数見られた。したがって定型の大学生においても、非言語的な形式において2次の誤信念課題の理解は難しいことが判明した。
3: やや遅れている
大学生を対象とした予備実験を行い、作成した1次の誤信念課題が非言語的な誤信念課題として機能することを確認した。一方2次の誤信念課題については、大学生の中でも一定の割合で誤りを示すことが確認されたため、刺激の調整が必要であることを確認した。
2次の誤信念課題の調整を済ませ、大学生を対象とした予備実験を行う。2次の誤信念課題の刺激の有用性を確認したのちに、認知症ならびに軽度認知症の患者を対象とした本実験を実施する。「1次の誤信念課題」と「2次の誤信念課題」に関するAOIに対する注視時間・視線移動のパターンを比較し、課題理解の指標探索を行う。
研究代表者の所属機関の異動準備に伴い、予定していた実験計画を先送りした。今後は先送りした認知症・軽度認知症患者を対象とした実験を研究代表者・研究協力者が共同で実施していく予定である。具体的には、実験手続きに関する打ち合わせを研究拠点のある東京にて定期的に行い、実験データの収集ならびに解析作業を推進する。
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脳神経内科
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Clinical Neuroscience
巻: 41(8) ページ: 1094-1098