研究課題/領域番号 |
22K13908
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中島 啓貴 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 助教 (50889368)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 測度距離空間 / 測度の集中現象 / オブザーバブル距離 / リプシッツ順序 |
研究実績の概要 |
測度の集中現象は、「任意の1-Lipschitz関数がほぼ定数関数とみなせる」という高次元空間特有の現象である。Gromovは測度の集中現象を元にして測度距離空間全体の空間上にオブザーバブル距離を定義した。さらにGromovは、オブザーバブル距離のコンパクト化の具体的な構成を与えている。その構成はピラミッドによるコンパクト化と呼ばれている。ピラミッドによるコンパクト化で重要な役割を果たすのが、リプシッツ順序とボックス距離である。中島はリプシッツ順序を誤差つきに拡張することで、リプシッツ順序を用いた議論が見通しよくなることを明らかにしていた。特に、誤差つきリプシッツ順序を用いることで、ボックス距離の収束に関してリプシッツ順序が保たれることが見通しよく示される。今年度は、リプシッツ順序を誤差つきにしたものと、以前から知られていた誤差付きのリプシッツ写像との関係性を明らかにした。したがって、誤差付きのリプシッツ写像を用いた議論が誤差つきリプシッツ順序の議論に翻訳できることになる。これにより、以前よりもオブザーバブル距離のピラミッドを用いたコンパクト化の取り扱いが容易になることが期待できる。また、誤差付きリプシッツ順序の性質の証明で簡潔なものを得た。特に誤差が0の誤差つきリプシッツ順序が通常のリプシッツ順序を復元することの証明において対応関係に関するKuratowski収束を用いると見通しよく示せることが分かった。これらの結果については現在論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誤差つきリプシッツ順序と誤差付きのリプシッツ写像の関係性を明らかにできたため。今回の知見により、誤差つきリプシッツ写像を用いる議論が見通しよく理解できるようになる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,測度距離空間全体の空間についての性質を研究する.特に、確率論的な手法を取り入れてオブザーバブル距離のコンパクト化の空間における具体的な列の収束について考察することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせの日程を遅らせたため、次年度使用額が生じた。次年度では、研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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