研究課題/領域番号 |
22K13910
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
窪田 陽介 信州大学, 学術研究院理学系, 講師 (30804075)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 量子スピン系 / トポロジカル相 / 作用素環 |
研究実績の概要 |
本年度は,作用素環論におけるKasparov理論のテンソル圏同変版にあたる(コ)ホモロジー理論の整備に関する研究(荒野悠輝氏,北村侃氏との共同)を進めた.テンソル圏は群や量子群を一般化した一般的な意味での対称性を記述する道具で,場の理論や量子スピン系などの数理物理でも大きな役割を果たす.この研究では,テンソル圏によって記述される対称性を持つような作用素環のトポロジカルな分類を与えるような理論を構築した.これは,群と表現圏の間の淡中-Krein双対性をKK理論のレベルにまで一般化したもので,既存のKK理論のモノイダル不変性に対してよりコンセプチュアルな理解を与え,さらにC*-環の包含の分類理論のうちトポロジカルな側面を抽出するための理論的枠組を与える.この内容は近日中に論文として発表される. テンソル圏のC*-環への作用は,量子スピン系における代数的な模型(ストリングネット模型)と関係があり,実際に量子スピン系に由来する具体例の構成も研究されている.上記の研究中で得られた知見,テンソル圏という概念の扱いの習熟は,次年度以降に本研究課題の主要部である量子スピン系の理論を進めるにあたっての基礎となると想定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題ともかかわる内容の専門書を出版する予定があり,その準備に時間を割く必要があった.また,本年度末付での所属の異動に関わる転居等の作業にも多くの時間を割くこととなった.そして,研究実績として報告したテンソル圏同変KK理論に関する論文の執筆,これは本課題に属する研究の一環として活動をしたが,最も進めたい課題の中心部からはやや外れた内容でもあり,そこに予定より大きな力を割くこととなった.本題も進展してはいるものの,いまだ論文の形で発表する段階には至っていない.次年度以降には,ここで得られた知見をきちんと本筋にフィードバックすることで,本課題に必要な過程であったことを証明することを目指す.
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今後の研究の推進方策 |
現時点で形が整いつつある成果(Kitaevの提案の数学的定式化,ホモロジー理論の構成など)をできる限り早くまとめて世に発表する.これは今後の分野の発展の基礎となることが期待されるものなので,その内容をほかの研究者と共有し議論を進めることで今後の進展の方向性により良い見通しを立てていくことを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行もあり,主要な科研費利用目的である(特に海外への)出張旅費を使う機会が少なかったためである.これはある程度想定通りのことであり,元々,新型コロナウイルスの流行状況を鑑みて, 1-2年目については少額の申請をし,柔軟に利用することを念頭に置いていた.研究活動が本格的に再開してきた現在,繰り越した分は次年度に十分に利用可能である.
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