研究課題/領域番号 |
22K13930
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松原 宰栄 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (70834381)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | GKZ超幾何函数 / Feynman積分 / likelihood ideal / 交叉理論 / twisted cohomology / local cohomology / Mellin変換 / rigidity |
研究実績の概要 |
本研究はGKZ超幾何函数と呼ばれる特殊函数の積分表示の理論を研究し、大域解析を進展させることを目標とする.昨年度までの研究に基づき,場の量子論におけるFeynman積分の満たす方程式系を超幾何系とみなす試みを継続した.また,常微分方程式のmoduli理論から定義される非rigid方程式というクラスの中に,GKZ系として記述可能なものを見出し,研究した. 1. 昨年度に引き続きSimon Telen氏(MPI MiS)との共同研究を行い,twisted cohomologyの微分差分方程式系としての記述を与えた.差分作用素の消去によってFeynman積分の満たす微分方程式系が得られる.この考察を進めることで,微分方程式系の特異点集合(より一般に特性多様体)を直接計算する,実験的なアルゴリズムを得た.計算できる例の限り,正しい結果を得るが,未だ証明には至っておらず,論文の発表には至っていない. 2. 線形常微分方程式の理論において,Katzによるrigidityの理論がよく知られる.適当に積分変換を行うことで,rigidな常微分方程式は自明な方程式に帰着する.積分変換を逆に追いかける事で,解の大域的挙動を理解することができる. 大島利雄氏(城西大学)との共同研究において,常微分方程式としてはnon-rigidであるが,Pfaff系としては大域解析可能な方程式のクラスを導入した.これはKnizhnik-Zamolodchikov系(KZ系),GKZ系の共通部分に属する方程式であり,古典的Appell-Lauricella F_D系の拡張でもある.このようなクラスの方程式系は,KZ系としてはrigidと呼ばれるべきものである.今後,KZ系のKatz理論,rigidity概念の構築がなされたとき,最も基本的なrigidな方程式の例となると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
twisted cohomologyの微差分方程式系との関係,非rigid系とGKZ系の関係など,当初の計画に存在しない話題が進展した.当初の目的であった交叉理論についての研究,漸近解析は大きくは進展していないが,後藤良彰氏(小樽商科大学),Avi Steiner氏(TU Chemniz)らと交叉形式,相対twisted cohomologyについての,Francisco-Jesus Castro-Jimenez氏,Maria-Cruz Fernandez-Fernandez氏(ともにSeville大学)とGKZ系の漸近解析についての議論を継続している.このため,総合的に判断し,進捗状況をやや遅れているとした.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度7-8月にMPI MiSを訪問し,再度Simon Telen氏と議論を行う.また,9月にMPI for Physics を訪問し,Feynman積分への超幾何系の応用を議論する.並行して前項目で記述した,後藤良彰氏(小樽商科大学),Avi Steiner氏(TU Chemniz),Francisco-Jesus Castro-Jimenez氏,Maria-Cruz Fernandez-Fernandez氏(ともにSeville大学)との議論を継続する.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の残額調整を怠ったため。繰越額はわずか60円のため、旅費の調整に充てる。
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