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2022 年度 実施状況報告書

動的境界条件の下で微生物・化学物質の影響を考慮した流体方程式の適切性理論の確立

研究課題

研究課題/領域番号 22K13948
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

古川 賢  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (70895309)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードロトカ・ヴォルテラ方程式 / 被食者捕食者方程式 / 移流拡散方程式 / Navier-Stokes方程式 / 濾過 / 適切性 / 漸近挙動 / 安定性
研究実績の概要

本年度は主に1次元の場合について,本研究で対象としている偏微分方程式系に対する解の適切性に関する数学解析と数値シミュレーションを行った.
数学解析に関しては,解の1次元での存在性に関して研究した.1次元ではNavier-Stokes方程式とのカップリングがなくなり移流拡散方程式のみを対象とすることができ,解析がしやすくなる.また,1次元での知見は高次元の場合に大いに役立つ.本研究で取り扱っている境界条件はDirichlet-Neumann境界条件から周期境界条件へ時間とともに遷移していく.このような境界条件での適切性の結果は線型の場合でも知られていないため,本年度はこれを対象として解析を行った.線型解析として発展作用素の構成と最大正則性の導出の2つを行った.前者ではレゾルベント問題の境界条件が時間に依存する場合にレゾルベンと評価を行い,線形化問題の発展作用素の枠組みでの解の存在性を証明した.後者では,時間を固定するごとのレゾルベント評価を導出し,作用素解析を援用することでLp-Lqフレームワークでの最大正則性評価を導出し,最大正則性のクラスでの時間局所解の存在を証明した.これらの結果はFourier解析と組み合わせることで高次元層状領域へ比較的容易に応用することができると期待できる.Banachの不動点定理を援用し非線形の場合の時間局所解を構成した.アプリオリ評価を確立し,時間大域解の存在を証明した.
数値シミュレーションシステムの開発を行なった.これにより可視化を行うとともにモデリングの妥当性を検証した.本件で対象としている方程式は被食者捕食者モデルに基づく.バクテリアに対応する捕食者の成長率と目詰まり原因物質に対応する捕食者の外力との関係性を複数のパラメータセットで探索した.概ね期待通りの結果が得られている.
これらの結果をまとめ論文として投稿準備である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね順調としたのは,1次元の場合に関して時間大域解の存在を証明できたからである.1次元においては本研究課題で所望している結果を証明することができた.また,数値シミュレーションによる可視化も行うことができ,この点は予定より進捗しているといえる.2次元以上の場合では,Naiver-Stokes方程式とのカップリングを取り扱う必要があるが,本年度では1次元での解析を重点的に行っていたため,この点に関しては予定より進捗が遅い.しかしながら,2次元以上で必要になる線型解析は1次元での数学解析で得られた知見の多くを活用することができるため,総合的には概ね期待通りの進展をしている.

今後の研究の推進方策

1次元での解析をさらに発展させる.1次元では解析が比較的容易であることと本年度の研究で時間大域解の存在が得られたことから,さらに発展的な数学解析を行う.解の漸近挙動や定常解の安定性などの解析を行うことを予定している.これは境界上に設置されたフィルターの目詰まりが起こる場合起こらない場合を数学的に解析することに相当する.本年度で構築した1次元での数値シミュレーションシステムを用いて可視化や複数のパラメータセットに対する数値実験を行い,数学的結果との比較を行うことも予定している.
2次元と3次元の場合の時間大域解の存在性に関する数学解析を進める.線型解析とアプリオリ評価の導出による時間大域解の構成を行う.まずは,線型化方程式の解析を行う.本年度で得られた1次元での知見を基にレゾルベント評価を行う.Fourier解析を用いて1次元での解析に帰着させることを想定している.2次元の場合に関してはアプリオリ評価を導出することで大きいデータに対して時間大域解の構成を行う.3次元ではL2がNaivier-Stokesのスケール列臨界となるため,初期データや外力データに対する何らかでの意味での小ささの仮定を課し,Banachの不動点定理により小さい時間大域解を構成することを予定している.2次元と3次元での数値実験をするための数値シミュレーションシステムの開発も行う予定である.

次年度使用額が生じた理由

本年度ではコロナの影響で予定していた海外渡航が行えなかったこととにより次年度使用額が生じた.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] プリミティブ方程式のデータ同化に関する数学的側面について2022

    • 著者名/発表者名
      古川賢
    • 学会等名
      第48回 発展方程式研究会(東京理科大学)
  • [学会発表] Nudging Type Data Assimilation to the Primitive Equations in Lp-Lq Maximal Regularity Setting2022

    • 著者名/発表者名
      古川賢
    • 学会等名
      若手による流体力学の基礎方程式研究集会(名古屋大学)
  • [学会発表] 最大正則性のクラスでのプリミティブ方程式のデータ同化2022

    • 著者名/発表者名
      古川賢
    • 学会等名
      2023年度日本数学会年会(中央大学)

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公開日: 2023-12-25  

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