研究課題/領域番号 |
22K13969
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大森 寛太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20913883)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | トポロジカル相 / 非可逆的対称性 / ベリー位相 |
研究実績の概要 |
今年度に得られた成果のうち、特に以下の2つの論文が重要です。 1.「Higher Berry phase of fermions and index theorem」: 本論文では、質量パラメータが時空依存性を持つフェルミオンに対して、超接続に対するAtiyah-Patodi-Singerインデックス定理を用いた摂動的高階ベリー位相の一般的な公式を見出しました。また、高階ベリー位相のうち非摂動的な部分についても、新たな計算手法を提案しました。これは、特に質量付きフェルミオンの境界に現れる相の解析に有用です。 2.「Noninvertible Chiral Symmetry and Exponential Hierarchies」: 本論文では、可換ゲージ理論におけるAdler-Bell-Jackiw異常によって破れた古典的な対称性が、近年導入された非可逆的なトポロジカル対称性として生き残ることを明らかにしました。これにより、可換ゲージ理論におけるカイラル対称性の保存則を正確に議論することができます。また、この非可逆的カイラル対称性を非摂動的に破る機構が存在し、これを利用して例えば可換ゲージ理論に結合したアクシオンに微小ポテンシャルを与える機構を説明することができます。 これらの研究成果は、研究の目的であるトポロジカル層のギャップ付き境界条件と密接な関わりがあります。前者は特にバルクが可逆理論である場合について重要な成果です。また、非可逆的対称性はトポロジカル相とそのギャップ付き境界の組として捉えることが適切であることがわかってきているため、論文2のように非可逆的対称性の具体例を指摘する論文は重要です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度得られた研究成果は、トロポジカル相のギャップ付き境界条件の重要性をより際立たせるものでした。 特に、「Noninvertible Chiral Symmetry and Exponential Hierarchies」にある非可逆的対称性は、一次元高い五次元のトポロジカル相のギャップ付き境界条件と密接に関わりがあることがわかっています。このことから、特に非可逆的対称性と結びつきのあるトポロジカル相について、そのギャップ付き境界条件を調べることを優先すべきであるという判断をしました。特に、上記論文の非可逆的カイラル対称性の部分対称性と関わりのある5次元トポロジカル相について調べた論文を作成し、投稿中です。 以上により、研究は概ね順調に進展しているといえます。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」にあるように、の非可逆的カイラル対称性の部分対称性と関わりのある5次元トポロジカル相と、そのギャップ付き境界条件について調べた論文を投稿中です。この研究においては、考慮されたトポロジカル相について、ギャップ付き境界条件の分類が完全にはなされていないため、より一般的な理解をすることが必要です。また、関連して、3次元トポロジカル相におけるギャップ付き境界条件やギャップ付きインターフェースを調べることがモノポールを含む散乱振幅を理解するために重要であることがわかったため、これについても研究を進めます。具体的には、2+1次元におけるSO(N)チャーンサイモンズ理論で記述されるトポロジカル相とそれへの共形埋め込みに付随するギャップ付きインターフェースの性質を調べる必要があります。これにより、カイラルな物質場を持つ量子電気力学におけるモノポール入り散乱振幅の終状態を記述することができあます。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究用のコンピューターを購入する予定であったが、初年度は研究室から提供されたもので十分な性能のものが賄えた。今年度により性能の良いコンピューターを購入する予定である。また、想定よりも多くの研究会にて先方負担で発表を行うことができたため、その分を今年度以降の旅費に回すこととした。
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