研究課題/領域番号 |
22K13990
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木村 直樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80846238)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多価イオン / 超微細構造 / 超微細相互作用 / 極低温静電イオン蓄積リング / 準安定状態寿命測定 / 電子ビームイオントラップ / 疑似ゼーマンフリー分光 / プラズマアシストレーザー分光 |
研究実績の概要 |
本課題は、孤立多価イオンの脱励起ダイナミクスの実験観測を通じて、電子と原子核の間に働くごく小さな超微細相互作用を研究することを目指している。 2022年度は、理化学研究所の極低温静電イオン蓄積リング(RICE)において、本研究のマシンタイムを3週間ほど確保し、ネオン様塩素多価イオンCl7+の実験を行った。ネオン様多価イオンは、第三励起微細構造準位に準安定状態3P0を有する。本準位にポピュレートされたイオンは、核スピンをもつ場合に限り、例外的に早い超微細誘起遷移によって基底状態1S0へと直接脱励起することが、計算によって予測されており、その遷移レートは超微細相互作用を研究する有用なプローブである。しかし、外部磁場誘起による脱励起の寿命も非常に早く、強磁場環境下では超微細誘起遷移を正しく評価することは不可能であった。本実験では、磁場を用いないイオントラップ装置であるRICE中にCl7+を20ミリ秒間捕捉し、極端紫外光検出器で捕捉イオンからの発光を時間分解計測して、捕捉時間に対する準安定状態3P0の減衰を観測した。また、質量数35(76%)と質量数37(24%)のCl7+を別けて実験を行い、同位体間で異なる減衰を示していることも確認された。これは、核磁気モーメントの違いに起因する超微細誘起遷移特有の差異であり、目的の遷移の観測に成功したことを裏付けるものである。今後、測定データを詳細に解析し、準安定状態寿命および遷移レートの導出を行う。 また関連研究として、比較的弱い磁場で運転できる小型電子ビームイオントラップを用いた多価イオン分光実験を推進している。本年度、本課題の採択前に我々が実証した疑似ゼーマンフリー分光を応用し、多価イオン時計遷移候補の超微細構造分裂を世界で初めて観測した。さらに、我々が過去に実証したプラズマアシストレーザー分光を寿命測定に応用できることも新たに実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り、2022年度の実験において、ネオン様多価イオンの超微細誘起遷移の観測に成功した。実験データの詳細解析と物理的議論が2023年の課題として挙げられるが、想定通りの進捗である。 加えて、当初の予定になかった実験も複数成功しており、それぞれの発展性も非常に高い。 上記の理由から、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の実験で取得したデータの解析を進め、超微細誘起遷移レートの導出を目指す。解析の結果、追加測定が必要となった場合は、適宜RICEのマシンタイムを確保し、2023年度中に必要な測定を完遂させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
耐用年数が短い極端紫外光用検出器の購入を見込んでいたが、別の実験で用いていた同等品の流用に成功したことで、初年度の出費が抑えられた。 ただし、標準的な装置寿命は既に過ぎており、今後の実験に継続して使用できる保証はない。そのため、初年度に購入を見送った本検出器の購入を2023年度に予定している。
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