研究課題
二次元のカゴメ格子に原子が並んだ結晶構造をもつ金属では、ディラック点やフラットバンドといった特徴的なバンド構造が電子物性に寄与することが期待されている。本研究では、166型とよばれる3d遷移金属がカゴメ格子を形成する金属間化合物の単結晶を育成し、60テスラ程度のパルス強磁場中での物性測定によって物性を解明することを目指した。鉄のカゴメ格子を有する物質においては、パルス強磁場中で電気抵抗、磁化、磁歪の測定を実施した結果、20テスラ程度でスピンフロップ転移が生じることが分かった。一般的な相転移とは逆に、低温において相転移がブロード化することを見出した。これは、熱揺らぎの効果と逆であり、低温で磁気的な揺らぎが発達したためと考えられる。スピンフロップ転移に伴い、電気抵抗の急激な減少も観測され、さらに、低温では自発磁化をもたないにも関わらず異常ホール効果とよく似たホール抵抗の振る舞いが観測された。以上の結果から、低温で発達する磁気的な揺らぎが異常なホール効果を生じさせていると考えられる。また、スピンフロップ転移にともない比較的大きな磁歪が生じることも観測され、スピン、格子、伝導電子が結びついた新たなカゴメ格子系を提案することができたといえる。並行して、カゴメ格子と類似したバンド構造が現れうるハニカム格子系の物質開発を行い、オスミウムのハニカム格子を持つ新超伝導体を発見した。この物質では、超伝導に先立ち何らかの相転移が存在することが分かった。相転移と超伝導やバンド構造との関連を構造解析や光電子分光により解明する実験を開始することができた。
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