研究課題/領域番号 |
22K14009
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
村井 直樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究員 (90784223)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 電子格子相互作用 / 電荷密度波 / 超伝導 / 非弾性X線散乱 / 非弾性中性子散乱 |
研究実績の概要 |
超伝導相と共存・競合する電荷密度波(以下,CDWと略)は様々な物質で観測される.従来,CDWの波数ベクトルはフェルミ面のネスティングに対応すると考えられてきた.しかし,現実に観測されるCDWの波数ベクトルは必ずしもフェルミ面ネスティングに対応しないことが近年指摘されつつある.本研究の目的は,CDWを特徴付ける波数ベクトルの決定因子を理解することである.最初のステップとして,最も典型的なCDW物質である遷移金属カルコゲナイド (ZrTe3) に注目し,CDW秩序相におけるフォノン分散構造を再考した.X線散漫散乱と非弾性X線散乱を組み合わせることで,CDW波数近傍におけるフォノン分散の大きなソフト化 (Kohn異常)を観測した.更に,特定の元素の置換によってCDW秩序やフォノン不安定性の制御が可能であることを発見した.現在,理論グループと共同で,実験的に観測されるCDW波数やフォノン異常が非経験的に再現されるかどうかの検証を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CDWに起因するフォノン異常は特定の波数の特定のモードにのみ現れる.従って,観測する波数領域を適切に選択することがフォノン計測を行う上で最も重要となる.令和4年度は,X線散漫散乱と非弾性X線散乱技術を組み合わせたフォノン計測を行い,非常に効率的にフォノン異常を示すモードの特定に成功した.この手法は他のCDW物質の研究にも適用可能であり,本研究を行う上での強力な手法を開拓したと言える.したがって現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は非弾性中性子散乱を用いたCDW相のフォノン計測を開始する.中性子分光装置を用いることで,X線散乱実験では観測が難しいCDW秩序相におけるフォノンの凍結 (ゼロエネルギーへのフォノンの落ち込み)の観測が可能になると考えている.また,実験と理論計算との比較を行うため,フォノン散乱弾面積の評価手法の整備を行う予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入をした計算機の費用が当初の予定よりも抑えられたため,次年度使用額が生じた.次年度に学会・研究会に参加し,研究成果を発表するための旅費として使用する.
|