研究課題
最終年度にあたる今年度は、Spring-8においてカイラル磁性体FeGeにおける超高圧下(~50GPa)の結晶構造解析を行うとともに、昨年度に行なったFeGeの超高圧下の磁気輸送特性の結果と併せて論文投稿を行なった。本研究では、アップスピン/ダウンスピンのバンド交換分裂の減少に起因した、非常に珍しい圧力誘起の金属―絶縁体転移の観測に加え、量子臨界点の直上において、長距離磁気相互作用が存在しないにもかかわらず時間反転対称性を破るような、ゼロ磁場での異常ホール効果の観測に成功した。観測された異常ホール効果の大きさや、保磁力の強さは量子臨界点に近づくほど劇的に増大することから、カイラルな系における量子揺らぎがもたらす新奇な現象である可能性が高い。一方で、スピンダイナミクスに由来する創発インダクタ効果についても探索を行った。昨年度に引き続き、複雑ならせん磁気構造を持つEu化合物における巨大な創発インダクタ効果の系統的な調査を行なうとともに、磁気構造そのものを明らかにするため共鳴X線散乱の実験を行なった。また、空間反転対称性を破る強磁性体において、ホール方向のインダクタ効果の発見にも成功したため、引き続き系統的な探索を行なっていきたい。スピン軌道トルクとトロイダルモーメントの時間変化による、新しい機構によるホール効果であることが期待される。研究期間全体を通じて、スピン揺らぎやダイナミクスに起因する新規な電荷輸送現象を数多く発見することができ、長距離の静的な磁気構造だけでは生じ得ない多彩な電子機能の学術的知見を得ることができた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
Journal of Physics: Materials
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