アクティブマターはその運動能の結果、高次機能の発現プラットフォームとなるさまざまなパターンを自己組織化する。アクティブマターの具体例は、非平衡条件下に置かれたコロイド粒子や液滴などを用いて実現した人工系の他に、生命現象に見出される。特に、自己組織化構造の機能発現は生命現象において重要な役割を担う。ミクロな生体分子である細胞骨格は細胞スケールの高次構造を自己組織化し、力学機能を発現する。 また、細胞は、自身の細胞骨格構造の力学機能を制御することで、マクロな運動を実現する。さらに、細胞間で運動や細胞骨格構造が協調し、より大きなスケールの生体組織の発生が正確に行われるなど、複雑な生命機能が発現する。 本研究では、特に次のふたつのアプローチにより、アクティブマター物理学の視点から、生命現象の背後に潜む普遍原理と、細胞骨格ー細胞ー生体組織のスケールを縦断する生体ダイナミクスの階層構造を探求する。本年度は項目1の研究について、研究成果を論文にまとめ、学術雑誌に発表することができた。項目1:細胞骨格が自己組織化する高次構造の形成原理とその力学機能発現メカニズムを解明する。項目2:細胞が互いと相互作用しながら集団で運動するときに形成する動的構造の発現原理を、細胞の力学モデルを発展させて明らかにする。 研究期間を通して、細胞骨格の自己組織化構造の構造形成メカニズムと、その結果実現するマクロな細胞運動についての物理的な理解を進めることができた。さらに、今後の研究の発展につながると期待されるシーズを得ることができた。
|