研究課題/領域番号 |
22K14028
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 成生 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (20865795)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 宇宙ニュートリノ / 宇宙線 / ブラックホール降着流 / 電波銀河 / 活動銀河核ジェット |
研究実績の概要 |
近年の電磁波観測から、電波で明るい活動銀河核ではブラックホール周囲の磁場が強い強磁場降着流が実現すると考えられている。しかし、強磁場の降着流で生じる非熱的現象についてはあまり調べられていない。また、ブラックホール近傍での非熱的現象は宇宙物理学の長年の問題である電波ジェットへの質量注入機構とも深く関連している。そこで今年度は強磁場降着流におけるガンマ線放射過程に関する研究を進めた。 まず、我々は強磁場降着流で磁気リコネクションにより加速された陽子がガンマ線放射を担うモデルを構築し、多数のガンマ線で検出されている電波銀河に適用した。その結果、質量降着率が小さい天体では強磁場降着流モデルでガンマ線のデータを説明できるが、質量降着率が大きな天体では強磁場降着流からの放射ではガンマ線データを説明できないことが明らかになった。 また、近年の数値シミュレーションから、強磁場降着流周辺ではブラックホールのごく近傍で磁気リコネクション過程が生じることが明らかとなってきた。我々はこの時におけるガンマ線放射を定式化し、磁気リコネクションが電波ジェットへの質量注入機構となることを示した。このシナリオでは電波観測から予期されるプラズマの量を自然に説明できる初めてのシナリオとなっている。このシナリオは将来のX線観測を用いて検証できることも提案した。 また、電波で暗い活動銀河核の降着流における宇宙線加速過程に関する数値シミュレーションを行なっており、高解像度の磁気流体シミュレーションを完了した。今後、乱流データの解析とテスト粒子シミュレーションを行ない、降着流での宇宙線の振る舞いを見ていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁場降着流中での磁気リコネクションにおける粒子加速過程を現象論的に用いてそこからのガンマ線放射過程を計算し、2本の論文を出版することができた。また、電波で暗い活動銀河核での宇宙線加速シミュレーションにおいて最も計算コストの大きな磁気流体シミュレーションを完了することができた。次年度中にはテスト粒子シミュレーションを行い、降着流での宇宙線加速過程に関する理解を深めることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
強磁場降着流での宇宙線加速現象はParticle-in-Cell法を用いて様々なグループが活発に研究している。しかし、磁気流体スケールのシミュレーションとテスト粒子シミュレーションを組み合わせて、この系で達成できる最高エネルギーを調べる研究はまだ行われていない。今後、テスト粒子計算コードを一般相対論へと拡張子し、強磁場降着流での宇宙線の加速・伝播過程を理解する。 また、電波で暗い活動銀河核の降着流のシミュレーションも継続して進めていく。これまでは暗い低光度活動銀河核の降着流でのシミュレーションを行なってきたが、明るい活動銀河核であるクエーサーでは降着流の力学構造が異なると考えられる。それぞれの場合でシミュレーションを行い、降着流における宇宙線加速過程に関する理解を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費の応募後、身分の変更があり所属機関から多くの研究費をいただくことができた。さらに、人材育成関係の研究費もいただくことができたため、2022年度は想定外に多くの研究費をいただくことができた。2023年度へと繰り越した本研究課題に係る経費は、本研究課題を遂行する研究員の雇用と、その研究員の使用する物品費・旅費へと使用する。
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