研究課題
相対論ジェットの終端に形成される電波ローブは, 超高エネルギー宇宙線の加速源として期待されている. しかし,宇宙線加速を論じる上で重要なジェットのプラズマ組成や磁場,温度,密度といった基本的な物理量に強い制限がついていない.そこで本研究では,電波観測との精密な比較を行うことでジェットの物理状態を解明することを目的とする.本年度は,非熱的放射をモデル化するために既存の磁気流体シミュレーションコードに宇宙線の空間及びエネルギー時間進化を解くソルバーを開発した.コードの応用課題として,銀河団内で観測されるWide-angle Tiled電波銀河における宇宙線乱流再加速現象の解明を試みた.その結果,電波スペクトルの空間構造の再現には乱流再加速が必要不可欠であること,及び,近傍の電波銀河では将来の硬X線観測の可能性があり,再加速効率を制限しうることがわかった.本成果は学術論文にまとめAPJに投稿し現在査読プロセス中である.また,国内・国際研究会にてそれぞれ1報ずつ発表し,Leiden大学(蘭)ではセミナーを行い高い評価を得ることができている.年度後半では,相対論ジェットの宇宙線加速機構解明に迫るべく,乱流再加速に加え衝撃波加速の物理を加えたモデル構築の検討をおこなった.本成果に加えて,ジェット内部での電子と陽子の温度非熱平衡を考慮したシミュレーションを実施し,2報学術論文として投稿した.また,偏波放射模擬観測に特化した数値コードを共同研究者との開発を行い,渦状電波に適応し論文を出版している.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 75 ページ: S123~S137
10.1093/pasj/psac103