研究実績の概要 |
今年度は、磁場下に置かれた電子スピン(マグノン)を用いた重力波の検出理論を構築した。重力波探索に特化したマグノン実験のセットアップを明らかにするために、Fermi normal coordinateに現れる無限の高次項を厳密に取り扱い、定式化した。結果、将来的にマグノンを用いた重力波探索の感度を飛躍的に上昇させることが可能であることを理論的に示した。研究成果は論文としてアーカイブに投稿済みである。[Asuka Ito, Jiro Soda, "Exploring High Frequency Gravitational Waves with Magnons," arXiv:2212.04094 [gr-qc].]
また、準安定真空による超対称性の破れに伴う第一種相転が予言する重力波について研究した。結果、DECIGOやLISAといった重力波干渉計を用いて超対称性の破れのメカニズムを検証し得ることを示した。[Chong-Sun Chu, Asuka Ito, "Gravitational Waves in Metastable Supersymmetry Breaking," Phys.Rev.D 105 (2022) 12, 12, arXiv:2201.11323 [hep-th].]
アクシオンダークマター中を伝播する光や、重力レンズにおいて、見かけ上の超光速性があらわれることが知られていた。 これらの物理が何を意味するのか解明するための第一歩として、IRの物理と伝播速度の関係性について研究した。[Asuka Ito, Teruaki Suyama, "Superluminal propagation from IR physics," Phys.Rev.D 107 (2023) 1, 1, arXiv:2210.15213 [hep-th].]
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、論文[Asuka Ito, Jiro Soda, "Exploring High Frequency Gravitational Waves with Magnons," arXiv:2212.04094 [gr-qc].]の成果を用いて、磁場下での重力波スピンメモリー効果について研究を進めていく予定である。またその現象を用いた重力波観測方法についても示唆を与えたいと考えている。
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