研究実績の概要 |
今年度は、磁場下での重力波とディラック粒子の相互作用を利用し、新しい重力波観測方法を提案した。
AI, Ryuichiro Kitano, "Macroscopic Quantum Response to Gravitational Waves," JCAP 04 (2024) 068 では、電子のg因子を測るために利用されているone-electron quantum cyclotronが高周波重力波探索に応用可能であることを示した。one-electron quantum cyclotronではランダウレベルの基底状態が(symmetric gaugeにおける)回転対称性により無限に縮退しており、エネルギーを保ったまま波動関数の大きさを変えることができる。このとき重力波による基底状態からの励起が波動関数の大きさに依存することを明らかにした。また、この性質は重力波に特有であり、電場による電子のdipole励起を考えると励起確率は波動関数の大きさに依存しない。したがって量子系を用いた高周波重力波観測の有効性が示された。
さらに、新しい重力波観測方法の構築に向けて、パルサー天体を用いた方法(AI, Kazunori Kohri, Kazunori Nakayama, "Probing high frequency gravitational waves with pulsars," Phys.Rev.D 109 (2024) 6, 063026)や、望遠鏡を用いた方法(AI, Kazunori Kohri, Kazunori Nakayama, "Gravitational wave search through electromagnetic telescopes," PTEP (2024) 2, 023E03)を提案した。これらの研究では、宇宙の磁場環境での重力波-光転換現象に着目し、地球に到来する光の観測で重力波の痕跡を探る方法を示し、背景重力波に制限を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も、新しい重力波探索方法、特に高周波重力波の観測へ向けて様々な観点から研究を進めていく予定である。1つの方向性としては、 AI, Ryuichiro Kitano, "Macroscopic Quantum Response to Gravitational Waves," JCAP 04 (2024) 068, arXiv:2309.02992 [gr-qc] のようにテーブルトップ実験、特に量子センシングを用いた高周波重力波観測について研究を進めていく。また一方で、 AI, Kazunori Kohri, Kazunori Nakayama, "Gravitational wave search through electromagnetic telescopes," PTEP (2024) 2, 023E03, arXiv:2309.14765 [gr-qc]のように望遠鏡を用いた高周波重力波観測の可能性についても、具体的な重力波源を想定した上で、さらに定量的な議論を進めていく予定である。
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