研究課題/領域番号 |
22K14036
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大里 健 千葉大学, 先進科学センター, 特任助教 (00914277)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 観測的宇宙論 |
研究実績の概要 |
宇宙物理学における根源的な問題であるダークマター・ダークエネルギーの正体、そして加速膨張の物理的な機構を探るため、大規模な銀河分光観測計画が予定されている。これらの計画では、銀河の三次元位置を測定し背景にある物質分布を描き出すことが主たる観測目的である。従来の解析では、観測された銀河分布から、その情報を要約する統計量を用いてダークマターの存在量に代表される宇宙論パラメータを推定する。しかしながら、統計量で表現できない高次の情報は失われてしまう。そこで、本研究では観測された銀河分布の場が持つ情報の全てを考慮するフィールドレベル解析に着目し、高速で実用的な統計解析基盤を構築する。 これまでの研究において銀河分光観測において、統計量を用いる利点は理論的な取り扱いの容易さや高速に計算が可能な点が挙げられる。フィールドレベル解析については近年高精度の理論モデルであるGridSPTが開発され、小スケールの構造の進化まで数値的に解くことが可能となった。一方で、要求される計算量は高いという点がボトルネックとなっている。この問題を解決するべくGraphic Processing Unit(GPU)という計算加速器を用いて高速にフィールドレベル解析を行う計算基盤を開発した。GPUを用いることで計算量の大部分を占める多数回のフーリエ変換を効率良く実行することが可能となった。さらに今年度は開発したGridSPT計算コードを、より正確なN体計算シミュレーションと比較し、小スケールまで十分な精度が出ていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は基盤となるフィールドレベル解析の計算コードであるGridSPTの開発や高速化を主に行なった。GPUを用いて高速化を実装し、実際にシミュレーションの結果を再現することを確認した。今年度は東京大学情報基盤センターのGPU計算機であるWisteriaの若手利用課題に採択された。さらにパラメータ推定を行う統計解析コードについても開発を既に開始しており、これらの結果をもとに原著論文として、2023年度中に投稿を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は基礎となるフィールドレベル解析のコードの開発を行なっており、その基礎的な性能についてはシミュレーションを用いて実証した。2023年度以降についてはこれらのコードをもとに、最終目標である観測データの解析に向けて研究を進めていく方針である。現在のコードはダークマターのみが構成要素である物質分布の進化を解くコードである。一方で、実際に観測されるのは自ら光を発する天体である銀河であり、物質分布と銀河分布を結びつける関係式が必要不可欠である。銀河の形成は非線形な天体物理によって駆動されているが、有限のパラメータで物質ー銀河分布の関係式を展開する銀河バイアス展開により、その分布を良く説明できることが知られている。そこで2023年度はこの銀河バイアス展開法をフィールドレベル解析に実装し、シミュレーションによる精度の検証を行なった後、実際の観測データに適用することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は当初の予定より出張の回数が少なかったため、当該予算に余剰が生じた。来年度以降の旅費に充当予定である。
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