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2023 年度 実施状況報告書

宇宙初期におけるヒッグス場のダイナミクス

研究課題

研究課題/領域番号 22K14044
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

向田 享平  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (10772858)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードヒッグスインフレーション / Palatini形式 / Einstein-Cartan形式 / ユニタリ性問題
研究実績の概要

本年度は、主にヒッグスインフレーションにおけるユニタリ性問題について研究した。A) 従来の計量形式に基づくヒッグスインフレーションにはユニタリ性問題があることが知られている。このことから、近年、より一般の形式の重力理論に基づくヒッグスインフレーションが考察されるようになってきた。本研究では、計量形式やPalatini形式をその一部として含む、Einstein-Cartan形式に基づいたヒッグスインフレーションを考察した。一般のパラメタでは、量子補正を加えることで、計量形式と同様にスカラロン自由度が現れることを明らかにした。理論のパラメタを計量形式からPalatini形式に向けて滑らかに変えていくことで、スカラロン自由度が重くなっていき、あるところで理論のcutoff scaleを超えて有効理論が破綻することを示した。これは、Einstein-Cartan形式においてPalatini形式と一致するパラメタが、量子補正に対して不安定であることを示唆する。B) 一般のスカラー場の理論にはその理論空間に非自明な幾何を有する。実はこの状況はヒッグスインフレーションでも同様であり、Einsteinフレームで見るとヒッグスの運動項の計量は曲がった空間を標的としたスカラー場の理論とみなせる。しかし、Jordanフレームではヒッグスの標的空間は平坦に見える。このように、スカラー場が重力と結合すると、標的空間の幾何学の物理的意味が曖昧になる。本研究では、計量のdeterminant部分に対応する部分を含む、拡張された標的空間を提案した。拡張された標的空間はフレーム変換に対して不変であることを示し、上で述べた曖昧性の問題が回避されることを示した。具体的応用として、拡張された標的空間の幾何学的パラメタとして、ヒッグスインフレーションのユニタリ性の破れのスケールを同定し、フレーム不変性を明白にした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計量形式とPalatini形式を含むEinstein-Cartan形式で量子補正を議論することで、ユニタリ性問題に対するスカラロン自由度の役割を明らかにする、という当初の試みは概ね想定通りであった。また、拡張された標的空間の幾何学に基づいてフレーム不変性を明白にする研究はある程度結果は想定されていたが、標的空間の幾何学に基づいたヒッグス有効理論の議論をある意味拡張する形となった。

今後の研究の推進方策

計量形式のヒッグスインフレーションでは予再加熱期に理論のcutoffスケールを超える縦波ゲージ場が生成されることで理論の有効な記述が破綻することが知られている。一方で、Palatini形式ではそのような高エネルギーゲージ場の生成はない。Einstein-Cartan形式は、計量形式とPalatini形式を連続的なパラメタの変化で繋ぐことができるため、どこかで予再加熱のユニタリ性問題が質的に変わるはずである。これを精査する。また、Einstein-Cartan形式では、理論のtorsion tensorのスカラー部分がスカラロンとなっているため、インフラトンが自然とaxial currentと結合する。標準模型を考えると、axial currentはchiral anomalyを通じてゲージ場のtopological項との結合を意味する。この場合、ゲージ場の不安定性によって爆発的なヘリカルなゲージ場とカイラル非対称性生成が期待されるため、その現象論を考察する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)

  • [国際共同研究] NORDITA(ノルウェー)

    • 国名
      ノルウェー
    • 外国機関名
      NORDITA
  • [国際共同研究] EPFL(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      EPFL
  • [雑誌論文] Quantum corrections to Higgs inflation in Einstein-Cartan gravity2024

    • 著者名/発表者名
      He Minxi、Kamada Kohei、Mukaida Kyohei
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2024

    • DOI

      10.1007/JHEP01(2024)014

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Geometry and Unitarity of Scalar Fields Coupled to Gravity2024

    • 著者名/発表者名
      He Minxi、Kamada Kohei、Mukaida Kyohei
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 132

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.132.191501

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chiral magnetohydrodynamics with zero total chirality2023

    • 著者名/発表者名
      Brandenburg Axel、Kamada Kohei、Mukaida Kyohei、Schmitz Kai、Schober Jennifer
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 108

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.108.063529

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Hot Spots around Small PBHs2023

    • 著者名/発表者名
      向田享平
    • 学会等名
      NEHOP
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Chiral effects & Baryogenesis in early Universe2023

    • 著者名/発表者名
      向田享平
    • 学会等名
      From particle physics to supernovae and early Universe
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Hot Spots around Small PBHs2023

    • 著者名/発表者名
      向田享平
    • 学会等名
      Summer Institute on Phenomenology of Elementary Particle Physics and Cosmology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 宇宙の再加熱・熱化2023

    • 著者名/発表者名
      向田享平
    • 学会等名
      熱場の量子論とその応用
  • [学会発表] バリオン非対称性生成:レビューと最近の進展2023

    • 著者名/発表者名
      向田享平
    • 学会等名
      第36回理論懇シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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