研究課題
本研究では、陽子・中性子数が過剰な不安定原子核におけるクラスター構造の探求するために、アクティブ標的をアップグレードすることを目指している。クラスター構造を探索するために、重心系の前方角度で不安定核ビームとアルファ非弾性散乱を実施し、反跳されたアルファ粒子をアクティブ標的MAIKo TPCで検出する。MAIKoでは荷電粒子の飛跡を互いに垂直な2方向のストリップ電極で構築している。しかしこの電極だと粒子がストリップに平行に入射した際にその角度を決定できない欠点を持っていた。そこで、本研究ではストリップ構造を互いに60度で交わるものに改良する。前年度の研究で、フレキシブル基板技術によって、世界で最も微細な構造(420 μm間隔のストリップ)を備える読み出し電極の開発を行った。この電極では、前回に作成したプロトタイプの性能評価を受けて、ストリップ間のクロストークを抑制するために、電極層の間にグラウンド面を新たに追加した。今年度はこれをMAIKo TPCに組み込む作業を行った。これまでのMAIKoでは電子の増幅にμ-PICを用いていたが、3方向電極ではμ-PICを用いていないので、新たにガス電子増幅器を組み込み電子増幅度の向上を図った。新たな増幅機構・読み出し電極を組み込んだMAIKo TPCを実際の不安定核実験で用いる予定のヘリウム(96%)+CO2(4%), 500 hPaのガスで動作させたところ、アルファ線源からの信号を観測することに成功した。今年度は複数のGEMを用いた時のガス増幅率の電圧依存性の測定を完了させた。これまでの開発の成果は、2023年11月にアメリカで開催された日米物理学会での招待講演で報告した。
3: やや遅れている
本研究での開発を目標としていた3方向読み出し基板の開発までこぎつけることができた。しかし、研究者が加速器施設での数多くのビームタイムに参加しており多忙であったため、その性能評価までを完了することができなかった。
今年度中に、作成した3方向読み出し基板の詳細な性能評価を行う。アルファ線源からのアルファ線を測定することで、前回のプロトタイプで問題となっていたクロストークの有無を確認する。その後、様々な方向からアルファ線を入射し、その角度構築の分解能を評価する。
研究遂行の遅れてしまい、当該年度に3方向読み出し基板の性能評価を行うことができなかった。次年度にこの性能評価を行うために必要な経費(アルファ線源を真空チェンバー内に設置するための治具)を製作するために予算を繰り越した。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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