研究課題/領域番号 |
22K14065
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
山谷 昌大 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 招聘職員 (80896275)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダークマター探索 / 宇宙線 / 反粒子 / 気球 |
研究実績の概要 |
宇宙線反重陽子の識別能力向上のために機械学習を用いた解析手法の研究開発を行なった。BDT (Boosted Decision Tree) を導入し、学習変数及び学習パラメータの最適化を行うことで、従来の解析と比較して反重陽子に対する感度が向上することを示した。この手法は反重陽子だけでなく反陽子や反ヘリウムの探索にも利用できる可能性がある。 また、従来の再構成アルゴリズムではプラスチックシンチレータ通過時のエネルギー損失による入射粒子速度 (β)への影響が顕著になり、低エネルギー反粒子のβが上手く再構成できない問題が顕になった。このような再構成精度の芳しくない変数に対し、時間を含めたヒット情報を入力変数とした回帰型ニューラルネットワークを用いることで、従来の再構成アルゴリズムに存在したバイアスを抑制したβを推定することが可能となった。 今後は、上記の研究成果をまとめた学術論文をGAPSを代表して執筆する予定である。 従来の特徴量による事象選別ではなく、検出器の粒子ヒット情報を3次元のデータとして3次元畳込みニューラルネットワークに学習させる研究も行なった。3次元畳込みニューラルネットワークに加え、特徴量を入力変数とした全結合型ニューラルネットワークの出力も最終的に結合することで、特徴量のみの識別よりも粒子識別能力が改善される可能性があることを示した。この成果は国際学会で発表し、学術論文としても執筆済みである。 MCシミュレーションデータ及び観測データのデータパイプラインの整備作業は継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
粒子識別能力の研究開発については従来手法よりも性能の良い結果が得られており、学術論文もまとめつつある。経過は概ね良好であると言える。 一方で、2022年度に予定していた南極長時間気球飛翔実験が2023年度以降に延期されてしまった。そのため当初予定していた観測データの解析を行うことがまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降の南極長時間気球飛翔実験に備えるために、観測データの物理解析手法の研究を進める。観測データ及びシミュレーションデータのデータパイプラインの整備や、反重陽子の探索結果を示すための統計解析手法の整備なども含め、GAPSチーム全体で協力しながら進める予定である。 また、飛翔に向けたGAPS検出器の動作確認や環境試験も行い、南極飛翔実験を問題なく遂行できるよう着実に準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
NASAの南極科学実験関係の予算の見直しにより南極長時間飛翔実験が2023年度以降に延期されたため、実験に係る旅費関係を使用する必要がなくなった。 南極実験に係る旅費及び実験準備のための物品費に使用する見込みである。
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