2024年度においても、宇宙線反重陽子の識別能力向上を目指した機械学習手法の改良を継続した。今年度は、BDT(Boosted Decision Tree)の最適化に加え、さらなる機械学習技術を導入し、反重陽子の感度を一層高めることを目指した。具体的には、学習変数の拡充および学習パラメータの精密調整を実施し、反陽子や反ヘリウムの探索に対する有用性を確認した。低エネルギー反粒子の速度(β)再構成に関する課題に対しては、昨年度導入した回帰型ニューラルネットワークをさらに改良し、プラスチックシンチレータ通過時のエネルギー損失に起因するバイアスを一層抑制しつつ、より精緻なβ推定を実現した。特に、時間を含むヒット情報の詳細な解析を通じて再構成精度を向上させ、従来手法に比して低エネルギー領域における性能を著しく改善した。また、今年度の新たな試みとして、Bragg曲線フィッティングにより得られた特徴量を統合することで、反重陽子の識別能力を向上させた。この手法により、従来の特徴量のみを用いた手法に比して、より高精度な粒子識別が可能となり、反陽子や反ヘリウムの識別にも有用な結果を得ることができた。加えて、MCシミュレーションデータおよび観測データの効率的な解析を目的として、グループ全体で利用可能な機械学習フレームワークを開発した。このフレームワークは、データ処理の効率を向上させ、解析の速度と精度を同時に高めることに貢献した。総じて、本年度の研究開発により、宇宙線反重陽子の識別技術は大幅に向上し、今後の研究に対する堅固な基盤が確立された。
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