本研究は、レーザー干渉計による精密計測技術を用いた新しい手法で、ダークマターの正体にせまるための研究である。 ダークマターは、この宇宙の物質の8割を占めることが分かっているが、その正体はいまだ不明である。そこで本研究では、重力波観測などで培われた精密計測技術を用いて、ベクトルダークマターによって生じる力を精密に計測することで、ダークマターの正体にせまるための技術開発を実施した。 ベクトルダークマターによって生じる力は、非常に小さい。そのような微小な力を計測するためには、力を高感度に計測できるセンサーと、雑音の小さな計測環境の構築が必要である。具体的には、高感度な速度計測型レーザー干渉計と、音響雑音や地面振動雑音等を低減するための真空装置や多段防振装置の開発が求められていた。そのため、本研究ではこれまで、真空環境下で懸架された防振装置の開発と、そこにレーザーを導入するための入射光学系や光インターフェースの構築を行った。具体的には、まず、最大200 mWのパワーを持つレーザー光源を風防付きの光学定盤にインストールし、真空槽に導入できるように光ファイバーと結合させた。次に、真空槽に光インタフェースをインストールし、その状態でも高真空状態を保てることを確認した。そして、真空槽内にリン青銅箔で懸架された初段の防振装置を導入した。導入された防振装置の性能は、テスト用のレーザー干渉計を用いて評価した。結果としては、100 Hzで 1 pm/rtHz程度の振動環境を実現し、今後のベクトルダークマターの観測へ向けた道筋をつけることができた。
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