研究課題/領域番号 |
22K14077
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
庄田 宗人 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20868939)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 恒星風 / 恒星コロナ加熱 / 恒星X線放射 / 恒星紫外線放射 |
研究実績の概要 |
恒星圏特性を決定する最も基本的な要素は恒星風と恒星XUV(X線と極端紫外線の総称)放射である。これらを理論的に推定すべく、2022年度は「1. 新たな物理素過程を取り入れた恒星風モデルの構築およびそれを用いた恒星風スケーリング則の導出」、「2. XUV放射モデルの恒星観測による検証」の二つの研究課題に取り組んだ。 これまでの恒星風理論研究においては恒星表面の熱対流と磁場の相互作用により生み出される波動(アルベーン波)をエネルギー源とするモデルが盛んに研究されてきた。しかし近年の太陽観測によると太陽内部から浮上してきた磁場の塊(浮上磁場)もエネルギー源として重要であることが示唆されている。このような背景のもと、私はアルベーン波と浮上磁場の両効果を取り入れた新たなモデルの枠組みを考案し、その数値シミュレーションを行った。シミュレーションをもとに導出したスケーリング則は太陽観測、恒星観測いずれとも整合的であり、恒星風形成においてアルベーン波と浮上磁場の両方が重要であることが示された。 太陽や太陽型星の外層大気は数百万度の超高温に加熱されており、この大気層をコロナと呼ぶ。コロナからは高エネルギーの電磁波(XUV)が恒常的に放射されている。逆に言えば恒星からのXUV放射を観測すれば恒星コロナ加熱の理論モデルを制限できる可能性があるということである。私は以前開発した太陽XUV放射モデルを一般の太陽型星へ拡張し、得られた放射スペクトルを観測と直接比較することでモデルの検証を行った。比較を行った三つの恒星観測のうち二つは太陽モデルの延長で非常に良く再現することができた。一方特に磁気活動の激しい恒星についてはこれまでのモデルの延長で説明することはできず、新たな加熱機構の必要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に取り組んだ二つの研究課題はいずれも順調に進行しており、滞りなく論文化可能な見通しが立っている。また、いずれの研究も太陽型星(太陽と同程度の質量を持つ恒星)にターゲットを絞っており、今回の成果が出たことでより一般の恒星(小質量主系列星)へモデルを拡張する弾みがついたと言える。以上の理由から成果の創出、今後の研究への発展、いずれの観点からも研究は順調に進行していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に行った研究はいずれも太陽型星にターゲットを絞っていたため、より一般の小質量星へモデルを拡張する。また、これまでは一次元モデルをベースに多次元効果を現象論的に取り入れていたので、それらの妥当性を三次元数値計算で直接的に検証する。計算負荷の少ない一次元計算とより物理的に正確な三次元計算をうまく併用しながらモデルの改良、発展に努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が完全には収束せず、2022年度に参加した国際学会6つのうち2つがオンラインでの参加となった。このため旅費の使用がかなり抑えられ、残額は次年度使用額へと繰り越した。2023年度以降は国際研究会は多くの場合講演者は現地参加となっており、加えて昨今の円安とインフレの影響のため、繰り越し額は全て旅費として使用する予定である。
|