研究実績の概要 |
銀河の星形成活動は, 星間媒質の物理状態から予想されるものと比べ非常に非効率である(典型的に数%)ことが,多くの系外銀河に対して観測的に明らかになっている.非効率な星形成活動の起源解明は,銀河進化学・宇宙物理学における最重要課題の一つとなっている. 星は分子雲の中で誕生することがわかっており,特に分子雲の中でも10万太陽質量以上の大質量分子雲が, 銀河の熱的・化学的進化に多大な影響を及ぼす大質量星の誕生環境である.すなわち大質量分子雲の起源は,大質量星形成・銀河進化の重要な初期条件である.しかし大質量分子雲の形成には,質量集積の困難と大質量星からのフィードバックという二大未解決要因があり, 小質量分子雲と比べてそもそも形成条件が未だ明らかでない. 昨年度までにに二相化した水素原子ガスから分子雲が形成する状況を,磁気流体シミュレーションで調べるための初期条件生成を,二次精度計算できる準備が終わった.本年度はさまざまな磁場構造を持った初期環境・さまざまな速度で水素原子ガスが圧縮される環境を念頭に,大質量分子雲形成の計算を進めた.現段階ではまだ大質量分子雲にまで成長が至っていないが,大局磁場の角度が圧縮方向に対して傾いている場合に,銀河衝突に代表されるような高速度衝突が分子雲形成を決定づける重要なパラメタとなっていることが明らかになった.多様な金属量環境も計算できるように,化学計算のアップデートも開始した.
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