研究課題/領域番号 |
22K14098
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
山上 遥航 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (40869905)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メキシコ湾流 / バレンツ-カラ海 / 気候モデル / NAM |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度実施した気候モデルによるシミュレーションの解析を行なった。具体的には、気候モデルMIROC6の標準版と渦許容海洋版の二つの設定を用いた、メキシコ湾流域のSSTの自然変動を拘束するアンサンブル実験である。 メキシコ湾流域のSSTとバレンツ-カラ海の海氷の間に有意な相関関係が見られ、大気循環偏差を介する影響が考えられた。そこで、その要因について調査したところ、主にNorthern Annular Mode (NAM)と考えられる冬季の大気循環偏差が、北半球中高緯度域に形成されるためだと明らかになった。メキシコ湾流域のSSTとNAMの関係は、標準版のMIROC6を用いた実験では明瞭には見られない。先行研究では、北大西洋亜寒帯循環のSST偏差と関係する可能性が示唆されており(Patrizio et al. 2023)、同様のメカニズムで説明できる可能性がある。 また、NAMの形成に熱帯域のSST偏差が寄与する可能性を検証するために、メキシコ湾流域のSST変動を拘束しつつ、熱帯域のSST偏差を抑える追加実験を行った。その結果、メキシコ湾流域のSST偏差のみでも、NAMと考えられる大気循環偏差が形成された。なおこの結果は大気大循環モデルを用いた実験によっても指示された。 以上のように、本年度の研究では、メキシコ湾流域のSST変動とバレンツ-カラ海の海氷変動を繋ぐ大気循環偏差の形成プロセスを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、メキシコ湾流域のSST変動とバレンツ-カラ海の海氷変動を繋ぐ、大気循環偏差の形成プロセスを明らかにすることができた。さらに当初は予定していなかったが、MIROC6・大気大循環モデルを用いた追加実験を行い、熱帯域と中高緯度域のSST偏差の相対的な重要性を評価することに成功した。したがって、次年度は今年度得られた成果をもとに論文執筆を進めることができる。上記の理由から、想定通りの進捗状況と言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は主に論文執筆に注力する。既に得られた結果は、メキシコ湾流域のSSTと中高緯度域の大気循環偏差の関係を指摘する研究と、これらの結果をもとにバレンツ-カラ海の海氷変動に着目し議論する研究の二つに分けられる。そこで、これまでに得られた二つの結果を、順番に論文として執筆する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はシミュレーション結果の解析に主に取り組み、国内学会での成果発表を行った。しかし、国際学会での発表や論文誌での研究成果公表には至らなかったため、出費が当初の想定より少なくなった。また、シミュレーション結果の解析を行う際の技術的な都合により、一時的に他のシステム上に保存する対応を続けたため、ストレージや計算機関係の出費を延期した。
次年度は、論文執筆の過程で必要となるシミュレーション結果のさらなる解析を行う計画であり、必要に応じて計算機やストレージ等の購入を行う予定である。また、昨年度および今年度得られた研究成果を、主に国外の学会で発表する予定である。そのため、旅費の出費を複数予定している。
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