研究課題/領域番号 |
22K14106
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研究機関 | 公益財団法人深田地質研究所 |
研究代表者 |
松澤 真 公益財団法人深田地質研究所, その他部局等, 主任研究員 (80913136)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 深層崩壊 / 付加帯 / 美濃帯 / 辰野町 / 断層帯 / 重力変形 / 地表面傾斜観測 / SAR解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、概略地質と詳細地形によって「深層崩壊の発生場を予測」し、さらに、「深層崩壊の発生危険性」を長期から短期の時間軸で評価する手法を構築することである。 2022年度は、ジュラ紀の付加体である美濃帯が分布する長野県辰野町を対象に変形斜面と地質構造との関係を調査した結果、深層崩壊の危険性が高い重力変形斜面は,付加体ユニット境界付近で、泥岩優勢の層準に発達する最大幅300mの断層帯付近に集中している事が分かった。 深層崩壊の発生危険度を把握することを目的に、重力変形斜面のうち2斜面で傾斜計により斜面変位を測定した。この2斜面は、重力変形地形が明瞭かつ崩壊が発生すると甚大な被害が発生する可能性が高い箇所である。傾斜計の設置は2022年12月に行い、1斜面に3地点、合計6地点に設置した。傾斜計による観測を始めて5カ月程度ではあるが、2つの斜面とも、重力変形と想定されるゆっくりとした変位が確認された。斜面の変位方向は、一つの重力変形斜面内の3地点で異なるため、斜面全体が一様に滑るのではなく、複数のブロックに分かれて変動していることが想定された。さらに、6箇所の重力変形斜面を対象とした複数時期の差分干渉解析(ALOS-2データ)から斜面の時系列の変位量を算出した結果、4つの深層崩壊危険斜面では、累積傾向がある斜面変動が確認された。6年間の累積変位は最大でも2mm程度であったが、深層崩壊危険斜面の上部では沈下方向、下部では押し出し方向の変位であったことから、重力変形を捉えている可能性が示唆された。また、この深層崩壊危険斜面の変形方向は、傾斜計による観測結果とも整合的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
辰野町役場および地元住民の協力を得ることが出来たことにより、当初予定していた地質踏査、重力変形斜面への傾斜計の設置などを予定通り行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、長野県辰野町をフィールドとして、重力変形斜面の分布を規制する断層帯の連続性の確認、重力変形斜面での地表面傾斜観測およびSARの時系列解析により地表変動を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、重力変形斜面の凹地に堆積する炭素試料の採取が難しいことが分かったため、炭素14年代測定が出来なかった。代わりに、次年度、滑落崖に形成されたチャート露頭から採取した試料を用い、宇宙線生成核種の測定により滑落崖の形成年代を推定する予定である。
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