研究課題/領域番号 |
22K14120
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅田 悠平 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (90815705)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カルサイト / 衝撃圧縮 / ハイパワーレーザー / X線自由電子レーザー / 融解 / 一段式火薬銃 |
研究実績の概要 |
本研究では、典型的な惑星構成鉱物として炭酸塩鉱物と含水鉱物に着目し、衝突における圧縮から解放までの一連のプロセスの変化の様子を時間分解しながら明らかにし、天体衝突現象やそれが惑星進化へ与えた効果などを理解したい。衝撃圧縮法によって天体衝突環境に相当する高温高圧環境を実験室で発生させ、主要惑星鉱物の圧縮特性データを従来よりもはるかに高い圧力領域まで拡張させるとともに、 衝突中および衝突後の融解や分解反応などのふるまいを調べることを目標としている。 初年度は、炭酸塩鉱物の圧力指標を構築することを目的として、超高圧下のカルサイトのユゴニオデータの取得をおこなった。その結果、200万気圧を超える圧力領域におけるカルサイトの状態方程式データの取得に初めて成功した。また、200万気圧より上の圧力域における衝撃温度データは、従来の計算結果と比べて低くなることが明らかとなった。 並行して、衝撃圧縮中と圧力解放中の構造変化を明らかにするために、ハイパワーレーザーとX線自由電子レーザーを用いた衝撃圧縮その場X線回折(XRD)実験を行った。その結果、衝撃圧縮中にカルサイトは融解し、その後の解放過程では非常に早いタイムスケールで多結晶化がおこることが明らかになった。速度干渉計による衝撃波速度のその場計測から、衝撃圧縮中のカルサイトはおよそ100万気圧近傍で融解することが明らかとなった。この結果は、ユゴニオ計測の結果とも調和的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験準備が順調に進んだことから、ユゴニオ計測実験は当該年度より前倒しで開始することができた。また、X線自由電子レーザーを用いたその場XRD実験も行い、圧縮特性とXRDデータの取得に成功した。また、一段式火薬銃による衝撃回収実験も予備的な実験はすでに完了し、実験遂行に問題がないことが確認できため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
その場XRDデータと速度干渉計データの解析を進め、融解および非晶質化の条件とそのタイムスケールを明らかにする。一段式火薬銃を用いた衝撃回収実験も継続しておこない、衝撃回収試料のX線計測や電子顕微鏡による組織観察によって構造変化や衝撃変成度を評価する。その場実験と回収実験の結果を相互比較することによって、一連の衝突プロセスを時間分解しながら、衝撃を受けた惑星鉱物の振る舞いを明らかにしたい。また、同様の手法を含水鉱物へも展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、予定していた実験のための旅費や設備、消耗品の一部を別の財源にて執行することができたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、2024年度の研究費と合わせて、実施予定の実験遂行のために使用する。
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