研究課題/領域番号 |
22K14125
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坪川 祐美子 九州大学, 理学研究院, 助教 (40824280)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スラブ / エンスタタイト / アキモトアイト / 準安定 / 相転移 / 高圧変形実験 |
研究実績の概要 |
スラブの第二成分であるエンスタタイトは沈み込むスラブ内でガーネットに固溶せずに残留し、温かいスラブ内では分解反応(エンスタタイト→スピネル+スティショバイト)を経てアキモトアイトへと相転移する一方、原子拡散の遅い冷たいスラブ内では分解反応が進まずにアキモトアイトへと直接相転移すると考えられる(Hogrefe+, 1994; Nature)。本研究ではこのようなエンスタタイトの特徴的な相転移に着目し、沈み込むスラブ深部条件下における変形中エンスタタイトの相転移と流動強度変化をその場観察し、スラブ深部の強度変化に及ぼす影響を評価することを目指している。 本年度は変形中の高圧型単斜エンスタタイト(以下、HP-Cen)相転移のその場観察を目指した実験において、比較的低い圧力条件下(~17 GPa)にて温度を600℃から昇温しながら歪速度一定下(~1E-5s^-1)で変形した実験では、~1000 ℃まで昇温してもHP-Cenの相転移はその場観察されなかった。その一方で、圧力~18 GPa下にて昇温しながら変形した実験では~1100 ℃で、また圧力~23 GPa下にて昇温しながら変形した実験では<1000 ℃でそれぞれアキモトアイトが出現しており、エンスタタイト-アキモトアイト直接相転移はより高い圧力下においてより低い温度から進行する傾向が認められた。変形後の回収試料のSEM観察では、母相であるHP-Cenの粒内・粒界の両方からアキモトアイトへの相転移が進行していたが、より高圧かつ低温条件下にて出現したアキモトアイトについて、粒内からの相転移が卓越している様子であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
母相であるHP-Cenの変形中、試料歪の増加に伴い圧力が徐々に減少する傾向がみられ、一部の実験ではHP-Cenの低圧相である低圧型単斜エンスタタイトまたは斜方エンスタタイトが出現することがあった。そのため実験時間の都合上、より低圧側でのHP-Cenが相転移しない場合における実験よりも、高圧側での新相アキモトアイトが出現する場合における流動強度測定を優先して実験を行った。そのため次年度以降に改めて、相転移の影響を受けていない状態にてHP-Cenの流動強度を評価する必要がある。一方でエンスタタイト相転移については、エンスタタイト-アキモトアイト直接相転移がその場観察されたことで、その温度圧力条件や相転移組織等について明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続きエンスタタイト相転移を伴うその場観察高圧変形実験を行うことに加え、SEM・TEMによる回収試料の微細組織観察等を行うことで、本実験条件下でのエンスタタイト-アキモトアイト直接相転移の詳細や新相アキモトアイトで卓越する変形メカニズムについて制約を行っていく予定である。また、アキモトアイトのパイエルス型クリープと転位クリープによる変形について、変形速度・温度条件・圧力条件等を系統的に変化させながら応力測定を行うことで、その温度依存性・歪速度依存性等を決定する。そのために、まず実験の出発物質となるアキモトアイト多結晶焼結体を準備する必要がある。
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