本研究は、隕石衝突を受けた鉱物から過去の天体史を読み解くために必要となる鉱物の衝撃変成メカニズムの基礎データを実験から得ることを目的に行なった。隕石衝突の衝撃によって引き起こされる鉱物の結晶構造変化に対して衝撃波の時間プロファイルが与える影響を実験によって調べた。衝撃実験下でその場X線回折測定を行うことで、結晶構造が変化していく過程を観察した。ジルコンと長石を対象の鉱物として実験した。短い衝撃波時間幅はレーザーによって再現可能で、申請者のこれまでの研究や他グループの実験によってデータが得られてきている。本研究では衝撃銃を用いて、より長い(サブマイクロ秒)衝撃波時間幅の実験を米国の放射光施設で行なった。ジルコンの実験結果からナノ秒衝撃波の場合と同様の高圧相への相転移を観察した。より高圧下での実験ではメルト化が観察されたが、その後の衝撃解放過程でも非晶質状態を保つことが明らかになった。長石における実験では衝撃下での非晶質化が観察され、衝撃解放過程でも非晶質状態を保つことが明らかになった。これらの結果はナノ秒の時間スケールでのレーザー駆動衝撃波での実験データと異なり、衝撃の時間幅が結晶構造ダイナミクスの可逆性に影響を与えるという知見が得られた。
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