研究課題
当初予定していた第63次南極地域観測隊(2021年11月~2022年3月)における海水試料採取は、研究代表者の健康問題が発生し、実施することが出来なかった。しかし、研究チームのメンバーに一部のサンプル採取を委託した結果、東南極ラングホブデ氷河近辺の水試料を入手することができた。取得したサンプルのDNA解析を行い、南極沿岸の氷河域に分布する微生物生態系に関する貴重なデータを得た。この結果を解析し、論文投稿に向けた準備を行った。また、第64次南極地域観測隊(2022年10月~2023年3月)への参加が叶い、63次隊不参加によって頓挫していた試料採取計画を完遂することができた。具体的には、東南極宗谷海岸沿岸域(昭和基地周辺)およびトッテン氷河沖の流氷域・定着氷域において、53か所の表層海水試料および海氷を採取した。さらに、南緯60度から40度にかけての南太洋において、東経110度線に沿って11か所から海水試料を採取した。これらの試料は本研究の最大の目標である、海氷に関連して生息するハプト藻の分布の解明に供することができる。さらに、宗谷海岸沿岸露岩域の地質調査を行い、多数の湖沼/浅海堆積物コアを採取することができた。これらは、ハプト藻の種変遷に基づいて氷床変動をはじめとした古環境変動を復元する研究に供することができる可能性がある。2022年5月に弘前大学理工学研究科への着任が決まり、新しい研究室を開設した。本研究課題で計画していた有機物解析に必要な実験設備の整備を弘前大学内の実験室で行った。他にも、化学実験室に必要な基本的な実験器具を購入し、学生指導も含めた研究実施体制を整えた。これらの作業によって予算が不足したため、ガスクロマトグラフの新規購入は断念し、共同研究者から中古で譲り受けた機器を再立ち上げして使用することとした。2023年度内に本格的に稼働させる予定である。
2: おおむね順調に進展している
第64次南極地域観測隊に参加し、目標としていたサンプルを採取することができた。
第64次南極地域観測隊で採取した地質試料、海水試料、海氷試料について、環境DNA分析と有機化合物分析を実施する。成果について、学会発表および論文執筆を行う。
第64次南極地域観測隊に参加したため、2022年度の半分を野外調査に費やすこととなり、日本での研究活動量が減少した。2022年度の途中に弘前大学に着任し、新任教員に対する援助を受けたため、本研究予算からの支出額が減少した。第64次南極地域観測隊では、計画以上の量のサンプルを採取することができたため、次年度では繰越額を活用することで、より多くのデータを得ることができると考えている。さらに、第64次南極地域観測隊で培った新たな人脈とアイデアを基に、さらに複合・発展的な研究テーマを展開していく予定である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 609 ページ: 111310
10.1016/j.palaeo.2022.111310
Progress in Earth and Planetary Science
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