研究課題/領域番号 |
22K14138
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
上田 修裕 学習院大学, 理学部, 研究員 (70847235)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 初期火星 / 水-岩石反応 / 水素生成 |
研究実績の概要 |
原始火星には水が存在し、高温の熱水と岩石の反応が起きたとされる。火星表層の岩石や鉱物(かんらん石)の組成が地球の組成と異なるため、その熱水は地球の熱水以上に水素に富んだ可能性がある。水素は生命の代謝に関わる重要な元素であることに加え、昔の火星表層環境にも影響を与えていた可能性がある。しかし、火星表層の水-岩石反応でどの程度水素が供給され、影響を与えたのかは不明な点が多い。そこで本研究の目的は、原始火星熱水系を想定したかんらん石を用いた室内実験を行い、水-岩石反応に由来する熱水組成(特に水素濃度)を明らかにする。 今年度では、火星もしくは他天体に存在するような組成のかんらん石がどの程度水素発生するポテンシャルがあるかを実験的に調べるものである。地球上に多く存在するFo90のかんらん石と比較して、よりFeに富むかんらん石が他天体では存在した可能性が示唆されており、今回は原始火星を模した実験を行った。 実験で使用するかんらん石の入手に関して、人工合成や地球上に存在する天然鉱物を使用する方法を検討した。Fo90のかんらん石以外の入手は比較的困難で、火星表層でも観測される組成で入手できたFo70のかんらん石ものを使用した。まず、かんらん石の入手及び鉱物記載などを実施した。その後、Fo70程度のかんらん石を使用して、水岩石反応実験を開始した。水岩石反応には非常に長い期間を要する(数か月~1年)。その溶液のサンプリングを定期的に実施し、得られた溶液の分析を行った。水素濃度に関しては、熱力学的な予想とも大きく違わない結果が得られた。300度温度条件下では、現在のところ、Fo70のかんらん石はFo90程度のものよりも高い水素濃度の溶液が生成している。今後、引き続き実験のサンプリング及びほかのかんらん石の組成での実験を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はかんらん石を使用した水岩石反応実験を開始及び水素濃度を測定することを主な目標としてきた。実験に必要なかんらん石の入手及び分析ののち元素組成分析などの初期分析を実施した。その後、前処理ののち、水岩石反応実験を開始できた。また、本実験からFo70と先行研究Fo90の比較では、よりFeに富むFo70かんらん石を使用した実験のほうが高い濃度であり、熱力学計算結果とも概ね傾向が一致していた。以上より、進歩状況は概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度使用したFo70のかんらん石よりもFeに富んだものを使用して、水岩石反応実験を実施し、かんらん石の組成の違いによる水素濃度の違いを議論する予定である。異なる鉱物組成のかんらん石の入手は現在も進行中で、天然のかんらん石が入手困難である場合は人工合成も視野に入れる予定である。鉱物を入手ののち、今年度と同様に水-岩石反応実験を予定である。今年度実験を行った実験の終了後、その固体生成物に含まれる鉱物の同定及び元素組成などの測定を行い、生成鉱物と水素の関係を明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた現場実験および学会参加に困難が生じたことに加え、実験の進捗に伴い当初導入する予定だった金チューブの納入を延期した。繰越分は今後の現場実験の旅費および金チューブの購入に使用する予定である。
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