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2022 年度 実施状況報告書

力学場の情報のフィードバックを考慮した消化管の機能的な運動機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K14145
研究機関神戸大学

研究代表者

竹田 宏典  神戸大学, 工学研究科, 特別研究員(PD) (30931787)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードバイオメカニクス / 消化器 / 筋収縮 / 食物輸送 / フィードバック機構 / アイソジオメトリック解析 / 境界要素法 / 流体ー構造連成解析
研究実績の概要

消化管は,能動的に力を発揮する筋組織と,各組織を制御する神経叢,そして,食物と接触して力学的な場の情報を感知することが示唆されている粘膜組織から成る複合組織である.本研究では,消化管組織に生じた力学場の情報が,筋組織の振る舞いへとフィードバックされることに着目し,食物の輸送や撹拌といった消化管の機能的な運動において,このフィードバック機構が果たす役割を明らかにすることを目的とした.筋組織の収縮と弛緩にともなう消化管の運動と,組織に生じる力学場を解析するため,数理モデリングと数値シミュレーションを通じて,力学場の情報を利用して運動する機能的な生体システム構築の根本原理を解明することに挑戦する.
2022年度は,消化管運動の数値シミュレーションを行うための準備として,筋組織の収縮と弛緩にともなう消化管運動と,消化管内部に存在する食物の流れの計算モデルを構築した.消化管組織を薄肉円筒の超弾性体,食物をNewton流体とみなし,Kirchhoff―Love shell理論による消化管組織の変形の記述と,境界積分法による流れの記述,そして,塑性力学理論に基づいた筋組織の収縮と弛緩のモデル化を行った.さらに,これらの数理モデルを連成させた流体―構造連成解析を行うために,アイソジオメトリック解析手法を構築した.また,構築した数値シミュレーション手法を用いて,筋組織の収縮と弛緩の時空間的な制御が,消化管運動と,食物の輸送に及ぼす影響を明らかにするための基礎的な検討を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,まず,筋組織の収縮と弛緩の時空間的な制御が,消化管運動と食物の輸送に及ぼす影響を明らかにする.その後,消化管に生じる力学場の情報が筋組織の挙動にフィードバックされる機構を導入し,食物輸送において,そのフィードバック機構が果たす役割を明らかにする.2022年度は,計画通りに,筋組織の挙動が消化管運動と食物輸送に及ぼす影響を解析するための計算モデルの構築と基礎的な検討を行った.
消化管運動にともなう食物輸送を消化管組織と食物が相互に力学的な作用を及ぼし合う流体―構造連成問題と捉え,数理モデリングと数値計算手法の構築を行った.消化管組織は,固体力学の支配方程式に従う円管形状のシェルとし,その運動は、KirchhoffーLove shell理論により記述した.また,消化管の運動の駆動力となる輪状筋と縦走筋の収縮と弛緩を周期的な塑性変形と考え,塑性変形理論に基づいて数理モデル化した.消化管の運動によって輸送される食物の挙動は、Reynolds数が小さい場合のNewton流体として境界積分方程式により記述した.数値計算手法として,アイソジオメトリック境界要素法を用いた.消化管の形状をNon-uniform rational B-spline (NURBS)関数を用いて離散的に表現し,境界要素法を適用した計算モデルを構築した.さらに,蠕動運動による食物輸送の数値シミュレーションに着手した.輪状筋の収縮波を変化させてシミュレーションを行うことにより,輪状筋の収縮と弛緩が食物にする仕事率と食物の流量の関係を調べ,食物輸送に対する蠕動運動の効率性について検討を進めている.

今後の研究の推進方策

今後は,計算モデルのさらなる改良と,消化管に生じる力学場の情報のフィードバック機構の導入を行う予定である.現在までに構築した計算モデルは、消化管組織を肉薄円筒と仮定し,面外方向のせん断変形を考慮していないが,小腸や大腸などの組織では,この影響を無視できない場合があるため,消化管の厚みを考慮したモデルに改良する必要がある.そのための方策として,消化管組織を厚肉円筒として,任意の三次元物体を扱う固体力学理論により,組織内部の応力・ひずみ場を記述する.数値計算では,研究代表者が過去に構築した非線形有限要素解析手法を応用することにより早期の導入が可能となる.
以上の計算モデルにより,消化管組織の縦走筋層と輪状筋層,粘膜層のそれぞれの層の力学的な性質に基づいて,どのような力学場が生じているのかを明らかにすることが可能になる.そこで,粘膜層に生じた力学場の情報を筋層の挙動へフィードバックする機構を数理モデル化し,食物輸送の効率性の観点から,そのフィードバック機構の役割を明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

消耗品費を当初予定していた額より抑えることができたため,その差額を次年度使用額として計上した.当該助成金は,翌年度分として請求した消耗品費と合わせて,コンピュータ周辺機器の購入に使用する予定である.

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公開日: 2023-12-25  

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