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2023 年度 実施状況報告書

高耐久性能を有する架橋型ガラス繊維複合レーザー溶接継手の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K14148
研究機関岡山大学

研究代表者

荒川 仁太  岡山大学, 環境生命自然科学学域, 研究准教授 (80882018)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード疲労強度 / 疲労き裂 / 摩擦攪拌接合 / レーザパターニング / レーザ接合
研究実績の概要

レーザ溶接継手での疲労強度向上効果に先立ち,摩擦攪拌接合(FSW)継手の疲労強度評価を実施している.同接合は他の接合方法に比べ,添加材が不要であることや異なる材料同士の接合も可能であることなどの多くの利点があり,中でも特性上溶接が難しいアルミニウム合金の接合に適している.そのため,自動車産業などでは,車体の軽量化に向け,アルミニウム合金,そして摩擦攪拌接合のさらなる導入に力を入れている.そこで本研究では,A5052の重ね合わせ摩擦攪拌接合継手の疲労強度評価として,EBSD解析,ビッカース硬さ,静的引張試験,疲労試験,弾塑性解析を行った.ビッカース硬さを調べたところ,フッキング付近から接合部中心にかけて母材に比べてビッカース硬さが低くなっていることがわかった.静的引張試験では,2回のうち,どちらもRS(ツール進行方向と回転方向が逆)側で破断し,破断の仕方も同様だった.フッキング先端ではなく,先端の少し手前から破断していることがわかった.疲労試験では,0.7kN~0.5kNにかけて急激に疲労寿命がのび,疲労限度は0.5kNとなった.また破断の仕方はRS側で破断するものの,引張試験の場合とは異なりフッキング部先端でき裂が発生し,そのき裂が進展し最終的に延性破壊を呈していることが確認された.また,詳細なSEMによる破面観察では,一方の端から疲労き裂進展が生じ,複数のき裂が合体しながら接合部表面に向かって成長していき最終的に延性破壊を呈する.なお,FEM弾塑性解析では,フッキングを考慮しない理想的なモデルを作成し,変位を指定することによる引張試験の解析を行った.その結果,上板と下板の隙間の先端ではなく,その少し手前でミーゼス応力は最大となることから,そこからき裂が発生すると考えられ,実際の引張試験においても同様の場所から破断していたことから同継手の破断特性が再現可能となった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究ではレーザ接合継手の疲労強度を向上する手法としてガラス繊維を配合することとした.それに先立ち,溶接形状の観点からその疲労強度評価が容易である摩擦攪拌接合(FSW)継手の強度評価を実施した.結果としては,摩擦攪拌によって形成されるスリット近傍のフッキング形状が疲労き裂発生起点となり得ること,また最終破断はフッキング後方から生じることを明らかにした.また,解析的な検討によってフッキングの後方から静的な破壊が生じる現象を再現可能となった.これより,スリット近傍から発生する疲労き裂の進展を阻害する目的で,Eガラスをスリット近傍に配置した解析モデルを作成し,FEMの弾塑性解析を実施した.その結果,スリット近傍での応力が緩和される傾向があることがわかった.
ここまでの結果から,接合継手のスリット近傍にガラス繊維を配置することの有用性を明らかにできたが,レーザ溶接継手のようにスリット近傍が直線的でなく滑らかな形状になっている場合ではその効果は不明である.今年度はFSW継手の評価と同様にレーザ接合継手の疲労強度評価を実施し,ガラス架橋効果の有用性を明らかにしていく.ここまで,接合材においてガラス架橋の有用性を示せたこと,且つ試験方法を確立できたことから,進捗状況は概ね順調と判断した.

今後の研究の推進方策

今後はレーザ接合継手に関して,その疲労強度及び破壊メカニズムを微視的に観察する.疲労試験には微小荷重(~200N)を付与できる軸力の疲労試験機を用い,微視的な観察には高精度なCCDカメラによって疲労き裂発生・進展をその場観察する予定である.また,疲労き裂発生箇所を定量的に評価するため,弾塑性有限要素解析及びデジタル画像相関(DIC)解析を実施する.その後,ガラス繊維の架橋効果を実験的・解析的に検討し,その有用性を明らかにしていく.
レーザ接合は外部企業に委託する予定で,疲労試験や微視的な観察は本研究室で実施する.さらに,本評価では疲労き裂の発生・進展を微視的に観察するため,試験片形状をかなりコンパクトなものにした(5mm×30mm四方).この試験片を使用して,試験を進めていく予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Relationship between weld rip diameter and fatigue fracture mode for friction stir spot welded tension-peel joints2024

    • 著者名/発表者名
      Miu Hayashi, Itsuki Fujita, Takumi Itadani, Jinta Arakawa, Yasuhiro Aoki, Hidetoshi Fujii, Hiroyuki Akebono, Atsushi Sugeta
    • 雑誌名

      Fatigue & Fracture of Engineering Materials & Structures

      巻: in-press ページ: 1-12

    • DOI

      10.1111/ffe.14295

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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