研究課題/領域番号 |
22K14150
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野寺 壮太 九州大学, 工学研究院, 助教 (00907016)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 粒子法 / SPH / 連続体損傷力学 / CFRP / 結合力モデル |
研究実績の概要 |
本研究では、粒子法の一つであるSPHに層間はく離モデル、繊維破断/座屈と層内き裂の損傷力学モデルを組み込むことでクラッシング破壊解析ツールを構築して衝撃エネルギー吸収メカニズムを調査し、CFRP製衝撃吸収材の設計指針の提案を目指している。 2022年度は、CFRP積層板の層間はく離モデルをSPH法に適用した。提案した層間はく離モデルは、損傷発生基準に応力基準を、損傷進展でエネルギー基準を用いるFEMの解析手法として提案された結合力モデルを援用した。結合力モデルは、層間変位に応じて結合力を下げる。通常のSPHでは、粒子の重心位置で粒子の変位を計算するため、相対変位に粒子の変形を含み、層間の相対変位を直接計算できない。そこで、本研究では繊維配向が異なる層界面で隣接する粒子のペアを三次元積層板理論によって均質化し、層間粒子を構成した。この層間粒子を用いて相対変位を計算し、結合力を下げることで層間はく離の予測モデルを構築した。その後、損傷モデルを組み込んだSPH法の解析を用いてどの程度の精度でCFRPの有孔引張の損傷分布を予測できるかを検討するため、2023年度に実施予定であった繊維破断、繊維微視座屈、および層内き裂のモデルを開発したSPH法のコードへ組み込むまで一気に進め、CFRP積層板の有孔引張解析を行い、実験結果との比較を行った。荷重-変位曲線において、初期剛性、および引張強度は実験とよく再現できることを確認した。積層板の各層の層内き裂および層間はく離の分布は、やや実験結果を過大評価しているものの定性的に実験結果を予測可能であった。各損傷の過大評価の原因については、通常のSPH法で問題となる粒子が疎な領域(端面、円孔、はく離領域)での計算精度の悪化、角運動量保存則が保存されないことが原因であると考えている。これらの改善のために定式化されたCSPH法を導入することで改善を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各損傷モデルを導入したSPH法でどの程度実験結果を再現できるのかを明らかにするために、2023年度実施予定であった繊維破断と層内き裂の損傷力学モデルの構築をし、有孔引張解析を行った。当初の計画では、2022年度実施予定だったモードI開口型の双片持ちはり(DCB)試験とモードII開口型の端面切り欠き曲げ(ENF)試験と提案したはく離モデルを比較して妥当性検証を行う予定であったが、CSPH法の導入と合わせて2023年度に行う予定である。総合して研究の進捗は順調であると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
SPH法の解析コードへ組み込み済みのCFRP積層板の層間はく離モデルを用い、層間破壊じん性試験との比較を行う。層間はく離モデルを組み込んだSPH法によるシミュレーションコードの検証のため、CFRP破壊じん性試験片を製作し、モードI開口型の双片持ちはり(DCB)試験とモードII開口型の端面切り欠き曲げ(ENF)試験を行う。荷重―変位線図とはく離進展量―変位線図の関係についてSPH法による計算と実験結果を比較することによって、開発したコードの検証を行う。 その後、構築済みのSPH法の解析コードに遷移微視座屈モデルを組み込むことで、CFRP積層板の有孔圧縮解析を行い、実験との比較を行う。CFRP積層板の有孔圧縮の実験では負荷-除荷試験を行い、円孔近傍の損傷進展を逐次的に観察する。CFRP積層板内部の損傷分布は、層内き裂を明瞭に観察できる軟X線撮影装置を用いる。SPH法による数値解析から得られた応力-ひずみ線図と損傷分布は、実験と定量比較を行い、SPHにおける損傷力学モデルの妥当性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度実施予定だった層間破壊じん性試験と、2023年度実施予定の有孔引張試験の実施を入れ替えたことが原因である。層間破壊じん性試験を実施するために必要な実験用品の購入に充てる予定である。
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