研究課題/領域番号 |
22K14161
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
藤井 達也 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (10780489)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PAA被覆CNT / 熱イミド化反応 / 複合材料 / 積層造形 / 微小材料試験 |
研究実績の概要 |
本研究では、ポリイミド(PI)の前駆体であるポリアミック酸(PAA)をカーボンナノチューブ(CNT)に被覆したPAA被覆CNT粉末を用い、選択的レーザー照射技術と組み合わせることで、耐熱性と耐宇宙環境性に優れたPI/CNT複合材の新規3D積層造形プロセスを提案する。具体的には、PAA/CNT混合ワニスを再沈殿法で粉末化することで粒子内部までCNTが均一分散したPAA被覆CNTの微粒子を作製し、それをレーザー照射にて局所的に熱イミド化反応させながら積層造形することで、従来の造形技術では実現することのできない超高濃度かつ良分散状態のPI/CNT複合材の3D造形プロセスを確立する。さらに、石英ガラス多孔質体を用いて熱イミド化反応中のPAA被覆CNT粉末を加圧造形することで、PI粒子間の界面接着強度を向上し、高強度・完全ボイドフリーなPI/CNT複合造形体の製造を実現する。 初年度となる2022年度、PAA被覆CNT粉末を用いたPI/CNT複合材の3D造形(積層なし)と造形体の評価を実施した。PAA被覆CNT粉末を乳鉢で粉砕し、ふるいを用いて53um以下の粉末を選別する。選別した粉末を内径10mmの金型に充填し、プレス機を用いて厚さ1mmになるまで加圧する。加圧した粉末に対し、複合型3Dプリンター(Snapmaker社製Snapmeker 2.0 A250T、レーザー波長450nm)を用いてレーザー照射する。焼結体を含む粉末を取り出し、純水中で超音波洗浄することで未焼結の粉末を除去し、PI/CNT複合造形体を得た。本研究では、金型への粉末充填量、レーザー出力、照射時間などを変化させて造形体を作製した。さらに、PI/CNT複合造形体の造形条件を検討するため、造形体の造形誤差、機械的特性、およびイミド化率を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的・目標を達成するため、PAA被覆CNT粉末とレーザー照射による局所的熱イミド化反応を利用し、PI/CNT複合材の3D造形(積層なし)とその評価を行った。PI/CNT複合造形体の造形誤差は、粉末充填量に影響されず、レーザ出力の増加により急激に増加した。破壊強度は、粉末充填量ならびにレーザー出力の増加により向上した。FT-IR分析より、レーザー出力320mW以上においてイミド化率100%を示した。本研究の造形条件の範囲内においては、粉末充填量35mg、レーザー出力320mWで造形体を高精度かつ高強度に造形できた。これは当初の計画と概ね一致しており、本研究が順調に進んでいることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の2022年度は概ね順調に進んだ。最終年度となる2023年度、少量の粉末で3D積層造形できる小型の粉末供給システムを構築し、局所的熱イミド化反応を用いた粉末積層造形装置を開発する。PI/CNT複合造形体の機械的・熱的特性を総合的に評価し、レーザー出力、照射時間、粉末積層厚さ、加圧圧力などの3D造形条件を最適化する。一連の挑戦的かつ独創的な実験技術により、宇宙用材料への適用に向けたPI/CNT複合材の新規3D積層造形プロセスを創出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な半導体や樹脂材料等の不足と新型コロナウイルス感染症の影響により、3D積層造形装置に組み込み予定の電動ステージの購入が先送りとなった。粉末供給システムが開発途中となっているが、部品選定は完了しており、2023年度分と合わせて速やかに執行する。
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