研究課題/領域番号 |
22K14165
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
田中 慶吾 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 研究員 (20911027)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レーザ溶接 / 高速度観察 / スパッタ / 気泡 / 金属蒸気 / 発光分光分析 / 可視化計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、レーザ溶接中に生じる金属蒸気に対する高速度観察及び発光分光分析を活用した包括的解析手法を構築する。金属蒸気挙動を定量的に理解することで、特にスパッタ(溶融金属の飛散物)といった溶接欠陥を誘起する物理現象を解明し、スパッタフリーを実現する金属蒸気挙動の制御技術の確立を目指している。 令和4年度では、レーザ溶接中の溶融金属や金属蒸気を対象とした可視化計測システムの構築に取り組んだ。まずは溶融金属内部の高速度観察システムを構築した。石英ガラスを溶融金属部に押し付けるような治具を設計・製作し、その有用性を検証した。検証において、高輝度なキーホール部を含まないため比較的観察が容易な熱伝導型溶接中の溶融金属内部を観察対象とした。その結果、スパッタ等の溶接欠陥を誘起する気泡の発生過程を観察でき、設計製作した観察治具の有用性を確認することができた。次にキーホール型溶接を対象とし、観察光学系の最適化を試みた。バンドパスフィルタ等の最適化によって、溶融金属の形状変化ならびにスパッタ飛散挙動、金属蒸気挙動などを同時に二次元画像として高速度観察することに成功した。次に発光分光分析システム構築のために、金属蒸気由来の発光スペクトル計測に適した分光器を導入した。導入した分光器を用いて、レーザ溶接中に生じる金属蒸気の発光スペクトルを計測し、二線強度比法を適用することで鉄蒸気やクロム蒸気の温度の推定ならびにその経時的変化を捉えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザ溶接中における溶融金属や金属蒸気挙動の高速度観察、金属蒸気に対する発光分光分析システムは予定通りほとんど構築できている。金属蒸気の粘性係数を推定する手法の確立がR4年度中に完了しなかったが、目途は立っている。また、成果の一部は溶接学会で口頭発表を行い、国際学術雑誌(Surface & Coatings Technology)へ投稿、掲載に至った。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度では、まず金属蒸気の物性計算に取り組み、計測された発光スペクトル強度値から温度、粘性係数を推定する手法を確立する。次に高速度観察結果から、スパッタの飛散タイミングや飛散方向、飛散量などを定量的に理解する。この知見と、金属蒸気挙動や発光スペクトル強度値から推定される粘性係数などの経時的変化と紐づけることで、レーザ溶接中において金属蒸気がスパッタの発生にどのように寄与しているかを明確にする。種々の金属や溶接条件において同様に解析を実施することで、レーザ溶接中におけるスパッタ発生の支配的因子の特定に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
分光器一式の購入に際して、比較見積もりの結果、予定額から差額が生じた。次年度では溶融池内部を直接観察するために必要な消耗品(石英ガラス、金属試料など)の購入に差額を使用する。
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