研究課題/領域番号 |
22K14178
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松下 真太郎 東京工業大学, 工学院, 助教 (20883036)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多孔体内混相流 / CCS / EOR / 大規模シミュレーション / 液膜計算 / lamella division / フォーム攻法 |
研究実績の概要 |
多孔質内混相流の2次元計算コードでは,画像データを0/1の2値情報に変換し符号付き距離関数に変換する機能を実装し,厚み方向の粘性効果を考慮することで,多孔体の構造を2次元的に模擬した2Dマイクロモデルによる実験と比較可能な数値計算が可能となった.3次元コードにおいても,X線CT画像から構成されたポリゴンデータをもとに符号付き関数を生成可能なプロセスを組み込み,実験と比較可能な計算モデルを構築した.複数GPU化では通信と計算のオーバーラップ実装を行うことで通信時間を隠蔽し,TSUBAME3.0上で高い並列化効率(弱スケーリング)を達成している.既往研究では表面張力がより支配的になる低キャピラリー数流れにおいて,格子ボルツマン法などの完全陽解法では計算が不安定になる報告がされていたが,本手法によって低キャピラリー数条件下でも安定に計算できるようになった.これにより,大規模並列計算を可能としながらCCSやEORにおける実用的なパラメータでの解析が可能となった.上記の研究成果は混相流シンポジウム2022にて発表し,混相流に掲載済みである. 多孔体構造の典型的な流路分岐を模擬した二股に分かれる計算系における液膜進展・分裂挙動のシミュレーションを実施し,液膜分裂挙動を再現した.表面張力が支配的な場合,分裂した液膜のうち流路径が大きい方を選択的に進展し,もう片方の液膜はほぼ動かず,ラプラス圧の大小関係で液膜進展が説明できる.表面張力が支配的でない場合は,流路内の速度分布によって作られる液膜の曲率と流路壁面の接触角がバランスしながら分裂した2つの液膜が両方とも進展する.これらの挙動は多孔体内の界面不安定性と定性的に一致している一方で,流動条件によっては液膜前方と後方で曲率が異なることによる圧力の差や液膜内流動の駆動が複雑に絡み合っており,より詳細な解析が必要であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった弱圧縮性気液二相流計算手法を用いた均一格子によるGPUコードの複数GPU化では,通信と計算のオーバーラップ実装まで完了しており,想定以上の進捗状況である.界面活性剤輸送モデルに関しても,差分法から有限体積法への切り替えやモデル方程式の改良などの大きな進展を含みながら液膜計算を実施することができ,マランゴニ効果が液膜を安定させる現象を再現できている.多孔体内の流路分岐を模擬した計算では,設備の都合上実験による直接比較が困難であったため,ラプラス圧の再現や界面不安定性に関する理論式との比較による妥当性の確認を実施し,粘性・表面張力等の流動条件による液膜進展・分裂挙動の解析を実施できた.以上の状況は,申請時の予定をほぼ踏襲できていることから,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りマルチフェーズフィールド法の実装,計算コスト削減手法であるAPT(Active Parameter Tracking)を導入し,多数泡沫が多孔体内でどのように流動するかを解析する.接触角モデルについても当初の予定通りHeight functionを利用した手法の実装を進めており,急激な曲率変化でより顕著になる非物理的速度であるspurious currentを抑制させるモデルを選定する.多孔体内に多数泡沫を注入した実験は簡易的な結果を取得済みだが,今年度より多くの条件で実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初NVIDIA A100搭載のGPUサーバー購入を予定していたが,設置を予定していた部屋の電力が不足している状況が確認されたことに加え,部屋を2023年度に移転する可能性が浮上したことからサーバーの構成内容を再検討する.研究が進んだことにより大規模並列計算が可能となったことで,スパコン使用料が申請当初より多くなることが予想されるため,2023年度,2024年度のスパコン使用量及び出張費等を見積もった上で,可能であればデバッグ用の小規模なGPUワークステーションを購入予定である.
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