研究課題/領域番号 |
22K14181
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡辺 勢也 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (80871540)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 洋上風力発電 / 数値流体力学 / 格子ボルツマン法 / 高性能計算 |
研究実績の概要 |
ウィンドファームの発電量評価には、各風車が形成するウェイクの相互干渉を正しく予測することが重要な課題である。本研究課題では、洋上ウィンドファームの発電量と風車ウェイク相互作用の予測精度向上を目的とし、高性能CFDツールの開発を進めている。ウィンドファームのCFDに一般的に用いられるアクチュエータディスクモデルではなく、より高精度にウェイクを計算可能なアクチュエータラインモデルを利用する。風車の各ブレードから発生する流れを計算可能なモデルであるが、より高解像度のメッシュが必要で計算コストが高いため、大規模計算に適した流体計算手法である格子ボルツマン法を用いる。 2022年度では研究実施計画通り、主に①アクチュエータライン風車モデルの格子ボルツマン法への実装と精度検証、②大気乱流の流入境界条件の設定方法の検討と実装、③複数GPU並列コードの開発に取り組んだ。 ①:格子ボルツマン法とアクチュエータライン風車を組み合わせた解析コードを開発した。単基風車(Vestas 2MW風車およびNREL 5MW風車)に対して先行研究や実測値との比較による発電量、ブレード力、ウェイクの検証を実施し、開発手法が十分な精度で風車の発電量とウェイクを計算できることを確認した。 ②:洋上風の大気境界層の影響を考慮するため、NRELにより開発された乱流風生成ソフトウェアTurbSimを利用した流入境界条件の設定方法を開発した。大気境界層の条件が発電量と風車ウェイクに与える影響を、2基風車のシミュレーションで調査した。 ③:複数GPU並列化を行い、デンマークの洋上ウィンドファームHorns Rev 1に対するテスト計算を実施し、観測データと発電量を比較した。開発中のCFDツールで風向とウィンドファームの発電量の関係を概ね再現できることが確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度(1年目)に実施予定であった①アクチュエータライン風車モデルの格子ボルツマン法への実装と精度検証、②大気乱流の流入境界条件の設定方法の検討と実装、③複数GPU並列コードの開発について、当初の計画通りおおむね進展している。 ①:研究計画通りアクチュエータラインモデルを格子ボルツマン法に導入し、計算精度を検証した。ナセルやタワーなどの構造物はInterpolated Bounce-back法でモデル化した。 ②:研究開始時は、ラフネスブロックを用いて大気乱流を表現する計画であったが、より詳細かつ低コストに大気境界層を設定できる乱流生成ソフトウェアTurbSimを利用し、洋上風の流入境界条件を実装した。 ③:領域分割法による複数GPU並列化を行い、九州大学のスーパコンピュータITOや大阪大学のSquidなどのGPUシステムを用い、デンマークの洋上ウィンドファームHorn Rev 1に対するテスト計算を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究より、より高い精度で発電量を予測するためには、実際のウィンドファームの運用のように風車の回転数やピッチ角を制御する必要があることがわかった。そのため、2023年度前半に風車の制御フローをCFDコードに導入し、検証を行う。また、風向・風速が時間変動する気象データへの対応のため、TurbSimで生成された乱流場の時間補完方法を検討する。2023年度後半では、洋上ウィンドファームHorn Rev 1に対し、風速や風向を変えた様々な条件下のシミュレーションを実施し、発電量を観測値と詳細に比較する。
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