ウィンドファームの発電量評価には、各風車が形成するウェイクの相互干渉を正しく予測することが重要な課題である。本研究課題では、洋上ウィンドファームの発電量と風車ウェイク相互作用の予測精度向上を目的とし、格子ボルツマン法を利用した高性能CFDツールの開発を行った。昨年度までに格子ボルツマン法へのアクチュエータライン風車モデルの導入、大気乱流の流入境界条件の設定、計算コードの複数GPU並列化を実施した。今年度では、開発コードのさらなる高速化、高精度化に取り組み、デンマークの洋上ウィンドファームHorns Rev 1に対する計算を実施し、開発手法が観測データの発電量を概ね再現できることを確認した。具体的な内容を以下に記す。 ①先行研究で実施された風車ウェイクCFDの検証のための風洞試験NTNU Blind Test 1のデータを参照し、格子ボルツマン法とアクチュエータラインモデルを組み合わせた解析手法の精度検証を実施した。開発手法が十分な精度で風車の発電量とウェイクを計算できることを確認した。 ②アクチュエータラインモデルに対し、風車回転数やブレードピッチ角の最適制御を導入した。 ③NRELにより開発された乱流風生成ソフトウェアTurbSimを利用した流入境界条件の設定方法で、実際の洋上風のように、時間的に風向が変化する流れに対応可能した。 ④格子ボルツマン法の高速なGPUアルゴリズムであるEso-twistの実装、および計算と通信のオーバーラップにより2倍位上の高速化を達成した。 ⑤複数GPU並列化を行い、デンマークの洋上ウィンドファームHorns Rev 1の計算を実施し、観測データと比較した。開発手法はウィンドファームの各風車の発電量をよく再現できた。
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