研究課題
本研究は、異なるフォノン周波数を持つ材料間の界面熱伝導(TBC)を改善することを目指し、ミスマッチ界面における熱伝導メカニズムを解明し、界面修飾を通じてTBCを向上させることを試みた。研究の二年目には、初年度に金属とダイヤモンドのモデルを用いて得た自己組織化単分子層(SAM)修飾時のTBC計測結果の理論解析を行った。さらに、2次元材料を界面層として使用することによるTBCの実験的研究を継続した。(1)SAM修飾の場合、分子動力学シミュレーションを用いて異なるSAM膜の長さと被覆率がTBCに与える影響を調査した。結果として、高い被覆率では、異なる長さのSAM膜が同様の配向性を示し、TBCはSAM膜の厚さに比例して増加することがわかった。被覆率が低下すると、SAMの配向性は一度低下し、その後、SAM膜の長さが一定値に達すると、TBCの増加に転じる。この二段階的なTBCの傾向は、界面でのフォノンの挙動と熱伝導の変化に密接に関連している。(2)2次元材料を使用した場合、グラフェン層の厚さが増すにつれてTBCが増加し、その後収束する現象が確認された。これはフォノン輸送が弾道から拡散へと移行する過程と関連している。一方で、グラフェン-MoS2の異質構造では、TBCが厚さに依存せず、これはフォノンの強い局在化によるものであると考えられる。また、欠陥を含むグラフェンでは、フォノンの平均自由行程が短くなり、TBCの収束が早まるが、最終的には欠陥の有無にかかわらずTBCが一定になる。この研究は、フォノン輸送レジームとTBCとの関係を明らかにし、熱インターフェースの設計と最適化におけるフォノン輸送の理解の重要性を示している。また、欠陥によるTBCへの影響としての弾性散乱と非弾性散乱の相対的な寄与についても新たな洞察を提供している。
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