研究課題/領域番号 |
22K14191
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中倉 満帆 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20849369)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多孔質 / 多孔体 / 集光型太陽熱 / 太陽熱燃料化 / ソーラーレシーバ / 熱輻射 / 強制対流 / 最適設計 |
研究実績の概要 |
本研究では、集光型太陽熱利用で用いられる多孔質ソーラーレシーバを対象に、多孔質構造部で起こる熱輻射-熱伝導-対流熱伝達が複合した高温(1400-1600℃程度)伝熱現象について研究を行う。これまで構築した熱流体数値シミュレーション手法を基に、形状最適化の手法を導入し実験的な検証を行うことで、高効率高温型シーラーレシーバの設計ツールを完成させることを目的とする。 レシーバにおけるミクロ-マクロスケール伝熱現象の相互作用の解明に向けて、これまでに構築してきた多孔質レシーバでの熱輻射-熱伝導-対流熱伝達連成数値シミュレーションを利用し、集光照射とは別に外部構造体からの熱輻射(以下外来照射と呼ぶ)が多孔質部での伝熱現象やエネルギーバランスに与える影響を調査した。これにより、レシーバ出口側に強制対流や熱放射で運ばれたエネルギーの一部から外来照射としてレシーバへ戻ってくることを明らかにした。また、熱媒である空気の質量流束が小さいケースでは、外来照射によってレシーバでの光熱変換効率を理論効率よりも過大評価してしまう問題も明らかとした。 また、ラボスケールで使用されている多孔質レシーバ/リアクタについて、その全体を対象とした熱流動と熱輻射の数値シミュレーション法開発、また内部流れ可視化用実験装置の構築を行った。熱流動シミュレーションでは多孔質体のCTスキャン画像から3次元構造を再構築し、実際の多孔質レシーバ/リアクタ内起こる熱流動現象を解析出来るようになった。また、ラボスケール多孔質レシーバ/リアクタの同サイズ・同形状の可視化実験装置を構築し、内部に実在多孔質を入れることで数値シミュレーションの結果と比較を行った。熱輻射に関しては、モンテカルロ光線追跡によって、多孔質レシーバ/リアクタ内での吸収量や熱流束の分布を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで構築してきた熱輻射-熱伝導-対流熱伝達の連成数値シミュレーション手法に外来照射の影響を組み込むことで、多孔質レシーバでの伝熱現象やエネルギーバランスについて新たなる知見を得た。このデータについては現在ジャーナルへの投稿準備中である。また、実機多孔質レシーバの全体を対象とした問題では、熱流体数値シミュレーション手法とその可視化実験装置の開発、熱輻射数値シミュレーション手法の開発を行った。X線CTで撮影した実在多孔体の連続断面画像から数値計算用の3D構造を再構築し、熱流体数値シミュレーションへと導入した。可視化実験装置では、実機レシーバと同形状・同サイズの可視化モデルを作成し、実在多孔質を利用した。これらによって、数値解析・実験ともに限りなく実機を再現したモデルを作成することができ、それぞれの結果を比較することで現象の理解や最適設計への知見の集積を行うことが出来るようになった。また熱輻射数値シミュレーションでは、モンテカルロ法による光線追跡から実機多孔質レシーバ内部での吸収量や熱流束の分布、さらに多孔質部での減衰係数や散乱位相関数等の光学的パラメータの計算を行うことが可能となった。これらのデータの一部は学会で発表済みであり、さらに精緻化したデータについては学会発表準備中である。また、最適化手法については学会や講習会への参加、文献調査を行い情報の集積・評価を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目では、1年目で構築した数値計算手法の高度化と実験装置の改良を行う。実機レシーバスケールを想定した熱流体数値シミュレーション法とモンテカルロ光線追跡法をカップリングし、レシーバスケールの熱輻射-熱伝導-対流熱伝達の大規模連成数値シミュレーション法を構築する。これにより、多孔質レシーバの構造がレシーバ効率や内部での伝熱現象に与える影響についてマクロスケール的な知見を得る。データは学会発表やジャーナル(International Journal of Heat and Mass TransferやSolar Energyなど)へ投稿する。また多孔質構造へのモンテカルロ光線追跡計算と熱伝導計算や形態係数による熱放射計算をカップリングし、そこに最適化手法を導入する。 可視化実験については、得られたデータを数値計算と比較し現象の理解を行う。その後高温集熱に適したレシーバ本体のデザインを提案し、その可視化モデルを作成し、昨年度のモデルと比較を行う。またPIV等の手法を導入することでより鮮明な可視化映像を取得する。また、新たに集光照射による加熱を含めた実験系の立ち上げを行う。これにより、これまで数値シミュレーションで示した多孔体のセルサイズの影響や外来照射の影響を実験的に測定する。
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