本研究では,高時空間・温度分解能を両立した熱計測システムを開発し、滴状凝縮における局所的な非定常伝熱特性を実験的に明らかにすることで、高熱伝達率を有する滴状凝縮の熱伝達メカニズムや膜状凝縮への遷移メカニズムを解明することを目的としている。 初年度は,研究の核となる熱計測システムを開発した。本システムは凝縮伝熱面の温度分布を取得することを目的とするが、凝縮面の裏側に冷却水を流す必要があるため、水を透過しない赤外線カメラを使うことはできない。そこで、本研究では感温塗料(Temperature Sensitive Paint; TSP)を採用した実験系を考案した。本年度はTSPの塗布条件を含めた基板構造の検討、実験装置の設計・製作ならびに温度・熱流束解析プログラムの開発を行った。 最終年度は、様々な濡れ特性を持つ伝熱面を用意し、液滴挙動と伝熱挙動の関係を調べた。直径1.2mm以上の液滴は明確に温度分布として可視化可能であり、これらは熱抵抗として伝熱の妨げになることが確認された。一方で、液滴滑落直後に大きな熱流束の発生が見られ、これが滴状凝縮の優位的熱伝達の重要なメカニズムであることが示唆される結果となった。今後の課題としては、ノイズ低減、TSPの劣化による計測データへの影響の検討、高熱流束域における実験が挙げられる。 研究実施者が知る限り、このレベルの解像度で凝縮における温度・熱流束分布を取得した実験例はなく、長年進歩が見られなかった凝縮伝熱分野において大きな学術的価値を有する。
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