研究課題/領域番号 |
22K14209
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐郷 幸法 豊田工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (70766435)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 同軸平行二輪ビークル / 移動ロボット / 重心移動 / 姿勢制御 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに,車両の走行制御には車輪の駆動力を用い,車体の倒立制御にはビークルの重量物を重りとして移動させる重心移動を用いる「低重心型同軸平行二輪ビークル」を開発している.低重心型同軸平行二輪ビークルは経験的・実験的に製作されてきたため,様々な用途に適用を拡大するには仕様に合わせて寸法や重量,重心位置の制限,重心移動を行うアクチュエータなどの機構を最適に設計する必要がある.また,申請者のこれまでの研究において,本ビークルの機構だけでなく搭乗者や搬送物の寸法や質量,重心位置の違いにより,車体揺動の減衰比や固有角周波数などの挙動特性がそれぞれ異なることが明らかになっており,搭乗者や搬送物を含めた本ビークルの挙動特性の変化に対応した最適な制御系設計が必要である. 令和4年度では,搭乗者や搬送物に相当する重りを様々に変更できる機構を低重心型同軸平行二輪ビークルに構築した.従来研究では,移動方向と同一方向の1軸駆動で重りを移動させて重心位置を変化させた. 本研究では,ビークルの移動方向である前後方向に加えて上下方向の駆動を増加させた2軸方向に駆動可能な「2自由度重心移動機構」を構築した.前後方向の移動はラックギヤとピニオンギヤ, 上下方向の移動はボールねじをそれぞれ使用し,DCギヤードモータを接続して駆動させる.重りの位置は高分解能のロータリエンコーダにより計測可能である. 令和4年度に開発した「任意の質量の重りを任意の位置に設置可能な機構」と様々に変更可能な重りを使用することで機構や制御系の最適設計の条件に与える影響を定量的に評価することが可能になった.また,有線操作のケーブルが車体の揺動に与える影響を考慮して,無線による遠隔操作システムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度の研究内容として設定した「詳細な車体揺動の挙動モデルの構築」が完了できていない.搭乗者や搬送物に相当する重りを様々に変更できる2自由度重心移動機構を着座式二輪ビークルに対して構築し,重りの様々な変化が車体揺動に与える影響を検証する必要がある.そのために,本システムや斜面,段差を含めた着座式二輪ビークルの車体揺動の詳細な挙動モデルをラグランジュの運動方程式により構築し,様々な用途への適用可能性についてシミュレーション解析と着座式二輪ビークルでの実験により検証しなければならない.現在,平面走行時の車輪駆動の影響も考慮した車体揺動のモデルは構築されているが斜面や段差は考慮されていない. 2自由度重心移動機構の開発が順調に進まなかったことが理由として挙げられる.購入物品であるノートパソコン(CPU外部のGPUを搭載)と3DCAD(本学科所有のソリッドワークス)を用いて設計し,本校のものづくりセンターとも連携して製作を行ったが,一部部品の破損などにより再設計することがあった.令和4年度中に2自由度重心移動機構を構築できたため,今後は実験と解析を進めることができる.
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今後の研究の推進方策 |
本システムや斜面,段差を含めた着座式二輪ビークルの車体揺動の詳細な挙動モデルをラグランジュの運動方程式により構築し,様々な用途への適用可能性についてシミュレーション解析と着座式二輪ビークルでの実験により検証する.また,「車体傾斜角度制御系の開発」および「機構と制御系の最適設計を志向した着座式二輪ビークルの開発」を行う.申請者の従来研究により,本ビークルは質量分布が変化する可変慣性項を有することが判明している.そのため,小澤らの「可変慣性項を持つシステムの制御と構造の同時設計,日本機械学会 最適化シンポジウム講演論文集 2000(4)」を本ビークルの車体傾斜角度制御系と機構の最適設計に適用する.ただし,本ビークルは可変の粘性項も有しているため,小澤らの設計法を改良し,令和4年度に改修した着座式二輪ビークルに適用して有効性を検証する.本研究により,本ビークルの機構と制御系の最適設計について検討を行い,シミュレーション解析と実機実験により有効性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消費税や送料などの影響により申請額を使い切ることができず,52円が次年度使用額となった.
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